社会への影響

1. 家族崩壊

 アルコール依存は、アルコール依存となった本人の身体をむしばむだけでなく、アルコール依存が進むにつれ、本人は、犯罪などの逸脱行為を起こしやすく、社会の一員としての生活を十分営むことができなくなるとともに、家族内の役割も十分に果たすことができなくなってゆくのであり、他の家族構成員個人に対し、たいへんな精神的・肉体的苦痛をもたらす。夫婦の情緒的関係の悪化はもとより、その結果、子供の情緒的、社会的発達にも悪影響を与えていくこととなり、家族全体は危機にさらされる。このように、アルコール依存は、本人だけではなく、結果としてほかの家族員の人格や社会生活をも危機に至らしめるものとなるのである。
 アルコール依存者の家族に一般的に見られる家族崩壊の特徴は、経済生活の面から見れば、病状が悪化するにつれ、仕事がまともにできなくなったための失業、あるいは職場を転々とすることによる収入低下のための生活苦、そして酒代の家計の圧迫がある。家族関係、特に夫婦関係の面では、夫から妻への暴力が顕著である。


2. 未成年の飲酒

 現在の日本では未成年者があたりまえのように飲酒している。下の表は全国の中学校・高校から無作為に抽出した学校に調査用紙を送り調査の協力を依頼した結果である。中学生の六割、高校生の七割は飲酒経験をもっていることがわかる。ここで特に注目してほしいのが、月に一回以上飲酒しているのが中学生の二割、高校生の四割にも達していることである。これらの生徒は自発的意思で飲酒していると推定できるからである。
 アルコールは薬理学的に麻薬類と同じような精神作用物質に分類される。このため、若年から飲酒するほど早期にアルコールに対する耐性が上昇して大量飲酒をはじめることにつながる。また、子供時代からの飲酒は、飲酒による現実逃避の回路が形成されることで、青年期に学習しなければならない対人関係の作り方やストレス回避の方法などが身に付かないままになることが多い。

中学生 高校生
全体 男子 女子 全体 男子 女子
N=42148 N=21277 N=21141 N=72396 N=35367 N=37029
飲まない 43.2(%) 39.8(%) 47.1(%) 27.1(%) 24.2(%) 29.5(%)
年に1〜2回 38.1 38.7 37.5 34.4 30.2 38.9
月に1〜2回 13.3 15.1 11.5 28.3 31.5 25.3
週末 1.4 1.9 1 3.9 5.4 2.3
週に数回 3.1 3.7 2.4 5.4 7.3 3.6
毎日 0.7 0.8 0.5 0.8 1.2 0.4



3. 飲酒と交通事故

 飲酒をすると事故を起こしやすいのは常識である。そこで、飲酒と交通事故に関するデータを調べてみたところ、夜間における死亡事故の四分の一に飲酒が絡んでることがわかった。
 さらに、図2を見てもらえばわかるが、飲酒程度の重い「酒酔い」運転による事故は減少しているが、程度が軽い事故は逆に増加傾向にあることがわかるであろう。この背景には、少量ならいいだろうという甘さから、飲み会の席で、車で来ていると承知していながら、酒を勧められてしまう、というのまで幅広い。

青:飲酒あり 白:飲酒なし
図2死亡事故に占める飲酒運転事故の割合(H11)


 たとえ程度の軽い飲酒でも事故を起こせば死者・重傷者が出る可能性は高い。「飲んだら乗るな」をみんなの意識の中に染み込ませることがいかに大切なことかをわかってほしい。

参考文献
 1.アルコール依存の社会病理   星和書店 1980 大橋薫
 2.アルコール医療入門  新興医学出版社 2001 編集:白倉克之
 3.http://www.itarda.or.jp/info28/info28_1.html 

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