糖尿病の病型分類(旧)(WHO:1985年)

T・糖尿病

1・インスリン依存型糖尿病 (Insulin-dependent diabetes mellitus:IDDMと略す)
2・インスリン非依存型糖尿病 (Non-insulin-dependent diabetes mellitus:NIDDMと略す)
@ 非肥満性のもの
A 肥満に伴うもの
3・栄養不良に関連する糖尿病 (Malnutrition-related diabetes mellitus:MRDMと略す)
4・その他の糖尿病
@ 膵疾患
A 内分泌疾患
B 薬剤ないし化学物質に由来するもの
C 異常インスリンないしインスリン受容体の異常
D ある種の遺伝性疾患
E その他

U・耐糖能障害 (Impaired glucose tolerance:IGTと略す)

@ 非肥満のもの
A 肥満に伴うもの
B 特殊な病態に関連したもの

V・妊娠糖尿病 (Gestational diabetes mellitus:GDMと略す)


インスリン依存型糖尿病 (IDDM)

このタイプの糖尿病は、糖尿病全体の 5%以下で、 インスリン非依存型糖尿病に比べると極めて少数です。 発症年齢は青少年に多く体型はやせていて、急激に発症します。膵臓からの インスリン分泌が極端に少ないため、毎日インスリンを注射で 補充しなければなりません。もし、インスリンが補充されないと、血液中に ケトン体 という脂質の代謝産物がたまって、 ケトーシス という状態におちいります。ケトン体は 強い酸性の物質のため、 血液が過度に酸性になり、重症な場合には昏 睡状態におちいることもあります(これを糖尿病性ケトアシド−シスといいます)。 この型の糖尿病の発症にはウイルス感染自己免疫が関与するといわれています。

インスリン非依存型糖尿病 (NIDDM)

インスリン量の相対的不足、分泌されるタイミングのずれ、インスリン受容体の数や感受性の低下を主な原因としています。このタイプの糖尿病は糖尿病全体の90%以上を占め、中年以降に発症することが多く、病者の体型は太っているか、過去に太っていた時代があることが多いといわれています。発症はゆっくりとしており、初期には症状の無い期間がかなり長く続くため、いつからこの病気が始まったのか、はっきりとしないことが多いようです。また、家系、特に親が糖尿病だったという人が多いのもこのタイプの特徴です。インスリンの分泌に関しては、分泌が減少していることがあります。ケトーシスにはなりにくく、治療法も、まず食事療法運動療法、次いで経口血糖降下薬を用いたりします。ただし、インスリン非依存型糖尿病といえども、治療にインスリンが用いられることもありますので誤解の無いように注意して下さい。

栄養不良に関連する糖尿病 (MRDM)

このタイプの糖尿病は従来、熱帯糖尿病、膵性糖尿病、小児ケトーシス抵抗性糖尿病、J型糖尿病とよばれていたもので、熱帯の発展途上国に多くみられます。MRDMは疫学的、臨床的、および生化学的所見からみて、さらに、線維結石性膵性糖尿病(fibrocalculous pancreatic diabetes;FCPD)と、蛋白欠乏性糖尿病(protein-deficient pancreatic diabetes;PDPD)の2つに分類されます。

@線維結石性膵性糖尿病(FCPD)
膵線維化と膵管内結石を伴う臨床像を主とし、中央アフリカ共和国、バングラデシュ共和国、ブラジル連邦共和国、インド、インドネシア共和国などにみられ、30歳以下の発症が多く、多くは小児期に反復性の腹痛発作を経験し、やせ型で栄養状態は不良です。多量のインスリンが必要なこともありますが、ケトーシスにはなりにくいとされています。発症には、これらの地域の主食であるキャッサバ根や、蛋白摂取不足が関与しているといわれています。
A蛋白欠乏性膵性糖尿病(PDPD)
このタイプの糖尿病は従来栄養不良性糖尿病とよ ばれていたもので、やはり開発途上国にみられますが、腹痛発作の既往のないこと、膵石 症膵管の閉塞・拡張がないこと、および膵外分泌異常を認めません。15〜25歳に発症し、ケトーシスになりにくく、重症のるい痩を特徴とし、発症には蛋白摂取不足が関係しています。

耐糖能障害(impaired glucose tolerance;IGT)

耐糖能障害(IGT)は経口糖負荷試験にて正常型と糖尿病型の間に位置するもので、加齢、肥満、ある種の併用薬剤、長期の運動不足が関係しています。IGTをもつ者は、正常者よりも糖尿病や動脈硬化性疾患にかかる危険性が大きいことにとくに留意しなければなりません。

妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus;GDM)

妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて75g糖負荷試験により耐糖能異常が発見された場合にのみ用いられる概念です。よって糖尿病があって妊娠した場合とは区別されます。GDMは周産期を終えるとおおむね改善し、耐糖能は正常化しますが、GDM例のなかには将来糖尿病を発症する頻度が高いこと、GDMと診断されていても実際は妊娠を誘因として糖尿病を発症するということがあるので、注意深い経過観察が必要です。


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