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ウイルス学総論

1.  ウイルスの構造

2.  形態

3.  化学組成

4.  抵抗性

5.  分類

6.  ウイルスの増殖

7.  ウイルスの培養と定量

8.  ウイルス感染と生体防御

9.  ウイルス感染に対する防御機構

10.            血清学的検査

11.            ワクチン

12.            抗ウイルス薬

 

ウイルス学各論

 

1.  ポックスウイルス科 Poxviridae

2.  ヘルペスウイルス科 Herpesviridae

3.  アデノウイルス科 Adenoviridae

4.  パポバウイルス科 Papovaviridae

5.  パルボウイルス Parvoviridae

6.  オルソミキソウイルス科 Orthomyxoviridae

7.  パラミキソウイルス Paramixoviridae

8.  トガウイルス科 Togaviridae、フラビウイルス科 Flaviviridae

9.  アレナウイルス科 Arenaviridae

10.            ピコルナウイルス科 Picornaviridae

11.            レオウイルス科 Reoviridae

12.            ラブドウイルス科 Rhabdoviridaeフィロウイルス科 Filoviridae

13.            レトロウイルス科 Retroviridae

14.            肝炎ウイルス

15.            その他のウイルス

16.            伝播性海綿状脳症 transmissible spongiform encephalopathy

プリオン病

ウイルス学総論

1.  ウイルスの構造

virion

nucleocapsid

core(芯)

核酸(DNA or RNA)

蛋白

capsid(殻)

capsomereの集合体

(envelope)

 

ヌクレオカプシド:カプソメアは相互に立方的対称をとり、共有結合している。

a)正二十面体構造

b)らせん状構造

 

エンベロープは脂質を含んでいるため、脂溶性のある溶媒(エーテルなど)により破壊され、そのビリオンは感染性を喪失する。

エンベロープの表面にはしばしばスパイクspikeとよばれる糖蛋白の突起が存在する。

 

2.形態

1)無エンベロープ正二十面体ビリオン

2)無エンベロープらせん型ビリオン

3)有エンベロープ正二十面体ビリオン

4)有エンベロープらせん型ビリオン

3.化学組成

1)核酸

 a)ほとんどのDNAウイルス:2本鎖DNA

   例外 パルボウイルス:1本鎖DNA

 b)ほとんどのRNAウイルス:1本鎖RNA

   例外 レオウイルス:2本鎖RNA

2)蛋白質

 大部分はカプソメア。エンベロープ、スパイク。

 これらは、感受性細胞のレセプターと結合する。また、抗原性を有する免疫反応を惹起

3)脂質:宿主細胞の細胞膜成分をエンベロープに取り込む。

 このようなウイルスは脂溶性のエーテル、クロロホルム、胆汁酸により不活化される。

4)炭水化物:エンベロープ上のスパイクに保有

 

4.抵抗性

1)温度:一般に熱に対して抵抗性が弱い(60,30分)が、低温では安定で、-78で数年間、4で数カ月保存できる。

2)水素イオン濃度(pH):一般に中性、弱アルカリ性で安定(pH5-9)

3)紫外線、放射線:急速に不活化される

4)化学薬品:次亜塩素酸、ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、希塩酸、アルコールなど。

 

5.分類

核酸型:DNAかRNA、1本鎖か2本鎖、カプシド対称性:正二十面体からせん状、エンベロープの有無で分類 

臨床的分類

1)向汎性ウイルスpantoropic virus、向多臓器ウイルスviscerotropic virus:ウイルス血症viremiaを起こし、全身の臓器に感染する。

  痘瘡ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、黄熱ウイルス、

  デング熱ウイルスなど

2)臓器親和性ウイルス

 1)向神経性ウイルス:ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、日本脳炎ウイルス、麻疹ウイルス(SSPE)

 2)向肺ウイルス:インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、レオウイルスなど

 3)向皮膚ウイルス:単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、

 痘瘡ウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、ヒトパルボウイルス(リンゴ病)、エンテロウイルス71型(手足口病)

 4)眼親和性ウイルス:アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、エンテロウイルス70型

 5)肝臓親和性ウイルス:A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス

 6)唾液腺親和性ウイルス:ムンプスウイルス、サイトメガロウイルス

 7)造血器親和性ウイルス:HIV, HTLV-1

 8)消化器親和性ウイルス:ロタウイルス、カリシウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルス

 9)催奇性ウイルス:サイトメガロウイルス、風疹ウイルス、ヘルペスウイルス

 

6.イルスの増殖

1)吸着:レセプター

2)侵入:

 1)viropexis(飲ウイルス作用):食菌作用様

 2)エンベロープ融合

 3)細胞内核酸放出:脱殻が細胞表面でおきる、核酸のみが細胞内へ入る。

 4)直接侵入:細胞膜を通過する。

3)脱殻:エンベロープやカプシドが破壊され、核酸が細胞質に放出される。脱殻終了からウイルス粒子が集合、成熟するまでの時期を暗黒期eclipse phaseとよぶ。

4)核酸、蛋白の生合成

 1)ウイルス生合成:

  ほとんどのDNAウイルス:DNA核内で生合成、蛋白成分細胞質内 (例外:ポックスウイルスは細胞質内で全てを生合成)

  ほとんどのRNAウイルスは全ての成分を細胞質内で合成

   (例外:オルソミキソウイルス、パラミキソウイルス、レトロウイルス生合成の一部を核内で行う)

 2)蛋白合成:

  1)ウイルス構成蛋白:後期転写、後期翻訳

  2)酵素:初期転写、初期翻訳ウイルス核酸に必要な酵素

  3)調節蛋白:後期転写、後期翻訳宿主細胞の代謝の抑制、ウイルス産物の合成を促進

  初期:脱殻した核酸より、後期:新生ウイルスの核酸より

5)核酸の複製と転写

 1)2本鎖DNAウイルス

 子孫ウイルスの鋳型。ウイルス構成蛋白(カプシド)や酵素蛋白合成のためのmRNAの鋳型となる。

 2)1本鎖DNAウイルス

 マイナス鎖DNA2本鎖(増殖型replicative form)初期、後期転写

                        マイナス鎖DNA

                        (ウイルス)

 3)2本鎖RNAウイルス

 2本鎖RNARNA依存RNAポリメラーゼプラス鎖RNA(mRNA)2本鎖RNA

 4)プラス鎖RNAウイルス

 プラス鎖RNAはそのままmRNAとして機能する。

 プラス鎖RNA→±RNA (RF)プラス鎖RNA(子孫ウイルス)

 5)マイナス鎖RNAウイルス

 マイナス鎖RNARNA依存RNAポリメラーゼプラス鎖RNA(mRNA)→±RNA (RF)マイナス鎖RNA(子孫ウイルス)

 6)レトロウイルス

 プラス鎖RNA逆転写酵素RNA-DNA雑種(hibrid)2本鎖DNA宿主細胞の染色体DNAに組み込まれるintegrationプラス鎖RNA(mRNA)

 

6)成熟と放出

7)ウイルスの干渉

 1)干渉:ウイルスの重感染後から感染したウイルスの増殖抑制

  a)レセプターの変化:干渉ウイルスによりレセプターが破壊される

  b)代謝系の変化:干渉ウイルスが細胞の代謝系を変化させる重感染ウイルスの生合成が不十分

  c)インターフェロンIFNの産生:IFN-a, IFN-b, IFN-g

  プロテインキナーゼの活性化蛋白合成開始因子eIF-2および65Kリボゾーム蛋白をリン酸化活性低下蛋白合成阻害

  2'-5'オリゴアデニル酸合成酵素の活性化ATPより2'-5'オリゴアデニル酸を形成RNaseを活性化ウイルスmRNAを分解

  ホスホジエステラーゼtRNAのCCA末端切断tRNAの機能消失ポリペプチド合成の阻害

 

7.ウイルスの培養と定量

1)培養:1)動物、2)孵化(発育)鶏卵、3)培養細胞

2)定量:

 1)物理的方法:ウイルス粒子浮遊液に一定数のラッテクス粒子を混ぜ、電子顕微鏡下で数える。

 2)生物学的方法

 a)赤血球凝集反応HA test:凝集価

 b)50%感染量ID50:ウイルスを10倍希釈して感染させる。

  動物の生死:LD50 , 発育鶏卵:EID50、組織細胞のCPE: TCID50

  c)プラック形成単位 PFU

 d)ポック測定:発育鶏卵の漿尿膜上のポックの数

 

8.ウイルス感染と生体防御

1)細胞レベル

 1)細胞変性効果CPE: cytopathic effect

 2)不稔感染abortive infection:ウイルス増殖が途中で止まる。

   ヒトサイトメガロウイルスハムスター細胞

 3)持続感染:ウイルスの増殖と細胞の増殖が平衡を保つ。

  維持型持続感染、内部共存型持続感染

 4)トランスホーメーションtransformation:形質転換

  腫瘍ウイルス

 5)細胞融合cell fusion :HVJ(Sendai virus)

 6)封入体

2)個体レベル

 1)顕性感染

 2)不顕性感染

 3)潜伏感染

 4)回帰感染

 5)遅発性感染slow virus infection

 既知のウイルスによる:AIDS, SSPE(麻疹ウイルス)、PML(パポバウイルス)

 プリオン(ウイルスではなく蛋白)亜急性海綿性脳症(スクレイピー、狂牛病、クール、Creuzfeldt-Jakob病

 

9.ウイルス感染に対する防御機構

1)非特異的

 1)マクロファージ、2)NK細胞:感染細胞の障害、3)補体:感染細胞の障害、4)IFN

2)特異的

 1)抗体:中和反応、2)ADCC::感染細胞の障害、3)細胞傷害性T細胞、4)活性化マクロファージ

 

10.  血清学的検査

 1)中和反応NT:プラック形成単位でみる

 2)補体結合反応CF:感作ヒツジ赤血球の溶血

 3)赤血球凝集阻止反応HI

 4)蛍光抗体法

 5)ELISA法

 6)ラジオイムノアッセイRIA

11.ワクチン

1)弱毒生ワクチン 、(2)不活化ワクチン、(3)コンポーネントワ クチン

 

12.抗ウイルス薬

1)ウイルス粒子の吸着、侵入、脱殻を阻害する:アマンタジン、

  リマンタジン

2)ウイルス核酸の複製あるいはウイルス蛋白の合成を阻害するもの:

  アシクロビル、ガンシクロビル、AZT

3)ウイルス粒子の形成、成熟、放出を阻害するもの

 

アシクロビル(ACV)は選択毒性が高い

 TKによりACVMPACVTPになるGTPと競合DNAポリメラーゼを阻害、DNA鎖の延長阻害(DNAに取り込まれると)、DNA合成阻害(DNAテンプレートに存在すると)

 

DNA型ウイルス

1.ポックスウイルス科 Poxviridae

2亜科(宿主域)

 (1)脊椎動物に感染 Chordopoxviridae:6属

 (2)昆虫に感染  Entomopoxiviridae

☆動物ウイルス中最大

 煉瓦状、エンベロープ(+)、内部:DNAを含むcore+1〜2個の側体 lateral body

☆増殖:細胞質内→好酸性封入体(B型封入体)

1]オルソポックス属 Genus Orthopox

A)痘瘡(天然痘)ウイルス variola virus

B)ワクシニアウイルス vaccinia virus

C)牛痘ウイルス cowpox virus

 

A)痘瘡(天然痘)ウイルス variola virus

1)性状

2)増殖

◆自然宿主はヒトのみ(ワクシニアウイルス、牛痘ウイルスと異なる)、実験的にはサルにも感染

◆発育鶏卵:漿尿膜接種→pock形成

◆組織培養:哺乳動物細胞で増殖、CPE(cytopathic effect)細胞変性効果を 示す。

3)感染病理

痘瘡(天然痘)smallpox, variola major

◇飛沫感染→上気道粘膜→局所リンパ節→リンパ管→第一次ウイルス血症→肝臓、脾臓、骨髄、肺で増殖→第二次ウイルス血症→全身皮膚・粘膜(発痘)

[症状]

◇感染→潜伏期12日→発熱(第一次ウイルス血症)→3,4日で解熱→発疹(丘疹期→水疱期→膿疱期→痂皮期) 全経過4〜5週、死亡率:2〜50%

◇発疹は頭、顔、手足に多く、躯幹に少ない

◇軽症痘瘡 variola minor, alastrim:病原性の少ないalastrim virus(変異ウイルスによる)、死亡率は1%以下

4)疫学:1980年に世界保健機構WHOにより、痘瘡根絶宣言

5)診断

1)ウイルス粒子の証明:病変部皮膚

  光学的顕微鏡:グアルニエリ小体

  電子顕微鏡:virion

2)ウイルス抗原の証明:蛍光抗体法

3)ウイルスの分離:発育鶏卵の漿尿膜

4)血中抗体価

6)治療、予防

 特効薬なし、抗ワクシニア人免疫グロブリンが予防、及び合併症の一部に効く。

 

種痘(vaccinia virus)

副反応

1)種痘後脳炎:種痘後2週間、原因不明

2)種痘後湿疹:湿疹部位にvaccinia virusが伝播

3)進行性ワクシニア:細胞免疫不全、重症

4)自家接種:外傷部皮膚、粘膜、眼(眼以外は軽い)

5)全身ワクシニア:一過性のviremia、全身に発疹

 

(B)ワクシニアウイルス vaccinia virus

1)種痘用継代株:痘瘡ウイルスのサル、ウサギ通過でヒトへの病原性を弱め、ウシ、ウサギの皮膚でよく増殖するように変異したもの。

2)宿主域が広い:ヒト、ウサギ、ヒツジ、ウシ

3)種痘副反応:上記

 

C)牛痘ウイルス cowpox

1)宿主域広い

2)CAM(chorioallantoic memmbrane)でpockが大

3)搾乳者の手指に感染→リンパ管炎、発熱(軽症)

 

 

 

2]未分類ポックスウイルス

伝染性軟属腫(いぼ)ウイルス

1)基本構造はオルソポックスウイルス属と同じ、抗原性が異なる。

2)ヒト組織培養細胞で増殖、動物、発育鶏卵では増殖しない。

3)感染病理

直接、間接接触→2週〜2ヶ月→白色真珠様結節(疣):上皮性細胞の増殖したもの→6ヶ月〜1年で自然治癒

 

細胞質内酸好性封入体:molluscum body, Henderson-Paterson body

 

2. ヘルペスウイルス科

 正20面体、2本鎖DNA

 

HSV Herpes simplex virusの構造のビデオ

Licensed for use, ASM MicrobeLibrary

 

 

 

ヒトヘルペスウイ

ルス

 

 

ヘルペス 

 

塩基長

感染細胞

潜伏感染

 

 

ファミリー

HHV

(Kb)

感染細胞

内封入体

部位

おもな疾患

 

 

HHV1 HSV-1

152

多数

三叉神経節

皮膚粘膜,新生児全身感染,脳炎

α

HHV2 HSV-2

152

多数

仙髄神経節

皮膚粘膜,新生児全身感染

 

HHV3 VZV

125

多数

脊髄後根

皮膚粘膜

 

 

HHV5 CMV

229

血液系細胞

,細胞

唾液腺

先天性,後天性感染

 

 

 

 

上皮細胞ほか

血液系細胞

 

 

β

HHV6A,B

162

Tリンパ球

なし

マクロファージ,脳?

HHV6Bが突発性発疹,

 

 

 

マクロファージ

 

 

熱性痙攣を起こす。

 

 

HHV7

145

Tリンパ球

なし

唾液腺?

突発性発疹

 

 

HHV4 EBV

172

Bリンパ球

まれに核

B細胞

伝染性単核球症,舌毛状白板症,

γ

 

 

上皮細胞

 

 

上咽頭癌,悪性リンパ腫,胃癌,

 

HHV8(KSHV)                        

210?

Bリンパ球ほか

なし

B細胞?

前立腺細胞?

 

カボジ肉腫,悪性リンパ腫(PEL)

 

 

 

初感染は水痘以外不顕性感染に終わることが多い

1]αヘルペスウイルス亜科 Alphaherpesvirinae

A.単純ヘルペスウイルス1型、2型 (HSV-1, -2) HHV-1,-2

B.水痘ー帯状ヘルペスウイルス varicella-zoster virus (VZV) HHV-3

C.Bウイルス

 

A.単純ヘルペスウイルス1型、2型 (HSV-1, -2)

1)性状:1型と2型は抗原性が異なる。

   感染:1型(口唇部、眼)、2型(陰部)

2)増殖

 ・宿主域:広い、自然宿主はヒトのみ

 ・発育鶏卵:漿尿膜(CAM)に小さなpock(1-2mm)

 ・培養細胞:ウサギ腎細胞、ヒト胎児細胞、CPE(+)

 

 

3)感染病理

1)初感染ヘルペス:初感染はほとんどが不顕性感染(90%)

 ・HSV-1:ヘルペス性歯齦口内炎、ヘルペス性角膜炎、外傷性単純ヘルペス、ヘルペス性湿疹(抗体ができない)、ヘルペス性髄膜脳炎

 ・HSV-2:ヘルペス性外陰部膣炎、新生児ヘルペス

2)再発

 口唇ヘルペスが最も多い。ヘルペス性角結膜炎はしばしば再発

4)疫学

 ・HSV-1の初感染:6ヶ月〜5年、成人の70〜90%が中和抗体を持つ

 ・HSV-2:性交によって感染、STD

5)診断

1)ウイルス粒子の証明:電子顕微鏡

   光学的顕微鏡:水疱病巣の多核巨細胞、核内封入体

2)ウイルス抗原:蛍光抗体法、酵素抗体法

3)ウイルスの分離:培養細胞、発育鶏卵

4)抗体検出:CF, NT, ELISA

6)治療

 Acyclovir: dGTPのanalogue、IUDR:thymidine analogue, Ara-C, Ara-A

 

B.VZV,  HHV-3

水痘 Varicella (Chiken pox), 帯状ヘルペス herpes zoster

1)増殖

・宿主域が狭い:ヒトのみ

・発育鶏卵:不可能

・培養細胞:ヒト、サル

2)感染病理

 初感染:小児(水痘)→潜伏感染(脊髄後根神経節)→

 再発・成人(帯状ヘルペス)

 

1)水痘

 気道感染、潜伏期13〜17日→発熱と同時またはやや遅れて発疹

 発疹の特徴 ・丘疹、水疱、膿疱、痂皮が混在、・手掌、足蹠には認めない、・躯幹→四肢  痘瘡とは異なる

成人の水痘

2)帯状ヘルペス

 1つの脊髄神経または脳神経の支配領域(片側)の発熱を伴う疼痛

1〜4日→神経の走行に沿って帯状に疱疹を認める→後遺症(神経痛)

 

Margaret (Peg) Johnson, Mesa Community College, Mesa, Ariz., USA

Licensed for use, ASM MicrobeLibrary

 

3)疫学

1)水痘:小児に冬〜春に流行

2)帯状ヘルペス:成人、流行は認めない

 

4)診断

1)水痘:臨床診断 容易、痘瘡との鑑別

     その他、ウイルス分離、血中抗体価

2)帯状ヘルペス:典型例は臨床診断容易、非定型例はウイルスの検出、分離

 

5)Bウイルス

・サルに自然感染

HSV様症状:口腔粘膜、皮膚の水疱

・ヒトに感染すると上行性脊髄炎、脳炎、死亡率80%

 

2]βヘルペスウイルス亜科

A. ヒトサイトメガロウイルス cytomegalovirus, HHV-5

 先天性巨細胞性封入体症

1)増殖

・宿主域:狭い、ヒトのみ

・培養細胞:ヒト線維芽細胞

2)感染病理

1)不顕性感染がほとんど

2)巨細胞性封入体症

  妊婦の妊娠初期の初感染→胎児(垂直感染)

3)サイトメガロウイルス単核症

 伝染性単核球症様症状、Paul-Bunnell陰性

 輸血または潜伏感染の再発

 

AIDS患者の肺において観察されたCMV感染単球(H.E.染色)

Danny L. Wiedbrauk, William Beaumont Hospital, Royal Oak, Mich., USA; Joan E.Barenfanger, Memorial Medical Center, Springfield, Ill., USA, Licensed for use, ASM MicrobeLibrary

 

3)疫学

 70%以上の成人が抗体陽性

4)診断

  特徴的な封入体を持った巨細胞:ふくろうの目owl's eye(下図)

 

Danny L. Wiedbrauk, William Beaumont Hospital, Royal Oak, Mich., USA; Joan E.Barenfanger, Memorial Medical Center, Springfield, Ill., USA, Licensed for use, ASM MicrobeLibrary

 

・ウイルスの分離:ヒト線維芽細胞

5)治療・予防:効果なし

 

B. HHV-6

・突発性発疹:1歳以下の乳児が罹患 突然発熱(3-4日持続)→解熱後、躯幹を中心に紅班性の小丘疹→1-3日後に治癒

・母親が感染源と考えられている。

T, NK細胞に感染

・慢性疲労性症候群の原因(?)

 

3]γヘルペス亜科

A. EBウイルス Epstein-Barr virus, HHV-4

 バーキットリンパ腫、上咽頭がん nasopharyngeal carcinoma (NPC),

 伝染性単核症 infectious mononucleosis

伝染性単核症における異型リンパ球

1)性状

 ヒト、マーモセットのBリンパ球に感染→B細胞株(EBVゲノム)

  抗原:EBNA, EA, MA, VCA

2)病理

1)不顕性感染

2)伝染性単核症:発熱、咽頭炎、リンパ節腫脹、脾腫、異型リンパ球(異型リンパ球の図

3)Burkitt's lymphoma

4)NPC:中国南部、台湾

3)診断

 伝染性単核症:Paul-Bunnnell反応 50〜80%が陽性

 

B. HHV-8:カポジ肉腫、KSHV: Kaposi's sarcoma-associated herpesvirus

その他

 HHV-7:正常人CD4+細胞から分離

 

3. アデノウイルス科 Adenoviridae

1953年 W.P.Rowe ヒト・アデノイドの培養→アデノウイルス

2属

1)マストアデノウイルス属 mastadeno virus:哺乳類由来

   ヒトアデノウイルス

2)アビアデノウイルス属 aviadeno virus:鳥類由来

ヒトアデノウイルスの電顕像 Jonas Jose Kisielius, Instituto Adolfo Lutz, S Paulo, Brazil; Marli Ueda, Instituto Adolfo Lutz, S Paulo, Brazil; Maria-Lucia Rz, Institute of Biomedical Sciences, University of S Paulo, S Paulo, Brazil, Licensed for use, ASM MicrobeLibrary

ヒトアデノウイルス

1)性状

1)正20面体

240 capsomere: hexon

12 capsomere: penton=penton base + fiber(細胞への吸着、赤血球凝集)

2本鎖DNA

2)抗原性

・群特異抗原:hexon、A (α)抗原

・亜群特異抗原: penton base、B(β)抗原

・型特異抗原:fiber, C(γ)抗原

2)増殖

1)宿主域:ヒト

 一部の型→ハムスター、ラット、マウス新生仔に感染して腫瘍原性を示す。

2)培養細胞:ヒト由来細胞で増殖、CPE(+)

3)病理

1)不顕性感染多い

2)

・上気道、眼の粘膜細胞に侵入、増殖またはリンパ節で増殖→潜伏感染

・小腸粘膜細胞に侵入、増殖またはリンパ節で増殖→潜伏感染

3)症状:多彩 プリント参照

4)診断

1)血清抗体価:CF(群共通)、NT, HI(型別)

2)ウイルス分離

 眼分泌液、咽頭ぬぐい液、糞便、尿→培養細胞

5)治療:対症療法、予後は良い

 

4. パポバウイルス科 Papovaviridae

1)乳頭腫ウイルス Papilloma virus

2)ポリオーマウイルス Polyoma virus

3)SV40(Simian virus 40)  Vacuolating agent

 

1)性状

 正0面体、2本鎖DNA,envelope(-)

2)病理

 腫瘍原性 oncogenicity:実験動物に対し

A属:乳頭腫ウイルス=ヒトパピローマウイルス(HPV)

 ヒトに、尋常疣贅 common wart、扁平疣贅 flat wart, 疣贅性表皮異形成症 epidermodysplasia verruciformis(30%が悪性腫瘍化)、尖圭コンジローム condyloma acuminatum, 子宮頚癌 cervical cancer

B属:

1)ヒトポリオーマウイルス

BKウイルス:腎移植患者(免疫抑制)尿中から分離、腎上皮細胞に潜伏感染→病原性は不明

JCウイルス:進行性多巣性白質脳症PML(脱随性疾患)患者脳より分離→この疾患の原因?

 両者とも不顕性感染、抗体陽性率:70〜80%

2)マウスポリオーマウイルス、サルSV40

 代表的なDNA型腫瘍ウイルス:発癌機構の研究に使われる

 

5. パルボウイルス Parvoviridae

DNAウイルス中最小、parvo=small

・正20面体、ssDNA

1)アデノ随伴ウイルス adeno-associated virus:AAV

 増殖にヘルパーウイルスとしてアデノウイルスを必要とする。

 遺伝子治療のベクターとして使われる

2)ヒトパルボウイルス HPV/B19

  (1)赤血球再生不良症

 ヒト骨髄赤芽球で増殖→急性貧血→1〜2週でウイルス抗体が出現→

 自然治癒

2)伝染性紅班 erythema infectiosum

 頬部発赤 slapped cheek→リンゴ病、または第5病 fifth disease

 両頬部、躯幹、四肢に紅班状丘疹が突発、四肢の発疹はレース状

 →数日で消退

3)胎児水腫

 経胎盤性に胎児に垂直感染→胎児肝で増殖→肝内造血の抑制→

 水腫状態→死産、流産、奇形

4)成人への感染

 四肢の発疹、slapped cheek(-)

 

6. オルソミキソウイルス科 Orthomyxoviridae

1)性状

myxo=mucinウイルス:ムチンに強い親和性(パラミキソウイルスも)

 

 オルソミキソウイルスの増殖:アクチノマイシンDで阻害

 パラミキソウイルスの増殖:アクチノマイシンDで阻害されない。

 

◇インフルエンザウイルスA, B, C型

内部蛋白(NP, M)の抗原性の違いにより分類される。

A, B型はエンベロープ上に2種のスパイクを持つ

 HA: hemagglutinin 3量体,  NA: neuraminidase 4量体

 A型:HAは15亜型(ヒトでは3種H1〜3;ブタではH1, H3; トリではH1〜H15)、

     NAは9亜型(ヒトでは2種H1,2)

 B型:亜型はない

 8分節マイナス鎖RNA(らせん状)ウイルス由来のRNA依存RNAポリメラーゼ(PB1, PB2, PA)によりmRNAをつくる。

 

C型は1種類の糖蛋白スパイクを持つ

 亜型なし。7分節マイナス鎖RNA

 

2)増殖

1)発育鶏卵培養法

 ・羊膜腔内接種法、 ・尿膜腔内培養法

2)組織培養法:イヌ腎細胞(Madin-Darby caine kidney, MDCK細胞)が良く使われる。その他、サル腎細胞、ニワトリ胎児細胞、ヒト羊膜細胞 など

3)感染病理

・飛沫感染→鼻咽腔→上気道粘膜上皮細胞に感染、増殖→繊毛上皮細胞が変性し繊毛が無くなる

・上気道粘膜に限局して増殖、ウイルス血症を起こすことは稀

 インフルエンザウイルスの増殖にはHAがHA1とHA2に解裂することが必須:これを行う蛋白分解酵素が気道粘膜に限局:ウイルスのNAは血清中に含まれるプラスミノーゲンに結合し、プラスミンへ変換する。このプラスミンが蛋白分解酵素としてHAを解裂する可能性がある。

・細菌の混合感染→蛋白分解酵素→HAの解裂を促進→ウイルス感染の拡大

・[臨床症状]悪寒、発熱、頭痛、筋痛、肺炎

4)変異

 HA, NAの抗原変異

1)大変異、不連続変異 antigenic shift

 ・A型ウイルスにみられる。アジアかぜH2N2 →香港かぜH3N2

  2種類のウイルスの重感染による遺伝子再集合体→vRNAが8分節であるため、2種類のウイルスが同一宿主に感染した場合、組換え体ウイルスが容易に出現する。

 

 

  A型ウイルスはヒト以外の動物を宿主にしていることも大変異が生じる原因となっている。

2)小変異、連続変異 antigenic drift

 ・B, A型に認められる

 ・HA, NAをコードするvRNAの塩基配列にみられる点突然変異→RNAポリメラーゼにはproof-readingの機能がない。

5)疫学

A型は10年ごとに世界的に大流行する。

1818〜1819年、スペインかぜ→2000万人以上が死亡

・現在はソ連かぜ(H1N1)と香港かぜ(H3N2)が主流

B型は散発的流行、C型は軽症に終わる

6)診断

  鼻汁、咽頭ぬぐい液よりウイルスの分離

  鼻汁、咽頭ぬぐい液よりウイルス抗原の検出(迅速診断キットがあるので最も一般的に行われる):酵素抗体法、光学的免疫測定法

・ペア血清:HI, NT, CF

7)予防、治療

HA コンポーネントワクチン→ハイリスク患者(心疾患、代謝性疾患、65歳以上 など)

  アマンタジン、リマンタジン:リソソーム内のpHを高めて脱殻を阻害(A型にのみ有効)

  ノイラミニダーゼ阻害薬:ザナミビル、オセルタミビル(A, B型両方に有効)

  小児に解熱剤としてアスピリン、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)を投与するとReye症候群と呼ばれる脳症を引き起こす危険性がある(禁忌)。

・抗菌剤→細菌による二次感染

  流行時の学校閉鎖

 

7. パラミキソウイルス Paramixoviridae

1)性状

1本鎖マイナスRNA

・らせん状ヌクレオカプシド、M蛋白とエンベロープを持つ

 

・エンベロープには2種のスパイクが存在する

 (1)HNスパイク:赤血球凝集素とノイラミニダーゼを持つ

 (2)Fスパイク:細胞融合および溶血作用をもつ、蛋白分解酵素によりF1とF2に解裂する→エンベロープ融合に必須

2)種類

パラミクソウイルス亜科

1)パラミキソウイルス属

  パラインフルエンザウイルス、・センダイウイルス(HVJ)

2)ルブラウイルス属

・ムンプスウイルス、・ニューカッスル病ウイルス

3)モルビリウイルス属

・麻疹ウイルス、・イヌジステンパーウイルス、・牛疫ウイルス

ニューモウイルス亜科

RSウイルス、・マウス肺炎ウイルス、ウシRSウイルス

3)感染症

1)パラミキソウイルス属

◇パラインフルエンザウイルス

・抗原性の違いにより4型に分類し、更に自然宿主によりヒト型と動物型に分ける

・成人:軽症の上気道炎、嗄声を伴う

・小児(5歳以下):1, 2型により重篤な咽頭気管支炎(クループcroup)

  3型は頻度が少なく軽症

2)ルブラウイルス属

◇ムンプスウイルス

・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

・唾液を介して経気道的に感染→潜伏期2〜3週間→所属リンパ節→ウイルス血症

・不顕性感染多い

・腺組織に親和性

・耳下腺炎:耳下腺の腫脹と疼痛、頭痛、発熱、両側は75%

・無菌性髄膜炎、脳炎:10歳以下に多い、男児が女児の3倍、後遺症なし

・精巣上体炎、精巣炎:思春期以降の男性、両側性に侵されることは稀、不妊になることは極めて稀

・卵巣炎:思春期以降の女性の5%に発症

・膵臓炎:上腹部痛、血清アミラーゼ高値

・聴力障害:小児において一側性、蝸牛前庭神経の障害

・心筋炎

・診断:ウイルスの分離(発育鶏卵、ヒト・サル培養細胞)

    血清抗体価(CF, HI)

・疫学:幼児期〜低学年学童に好発、季節は関係しない、終生免疫

・弱毒生ワクチン

3)モルビリウイルス属

◇麻疹ウイルス

Hスパイクはサル赤血球を凝集するがノイラミニダーゼ活性はない

・病原性

・麻疹:感染力が強い、経気道的感染→上気道の上皮細胞で増殖→所属リンパ節→ウイルスはリンパ球によって、肝、脾、扁桃、虫垂、パイエル板、肺などに運ばれる→多核巨細胞形成(Warthin-Finkeldey巨細胞):リンパ球数の減少、一過性の細胞性免疫低下→1-2週の潜伏期→発熱を伴う結膜炎、上気道炎(カタル期)、コプリック斑Koplik spot:上顎部第1大臼歯に相当する頬粘膜部の口内炎)→解熱→再度発熱→発疹(顔面→躯幹→四肢)→3-4日で回復

麻疹後遺症

   麻疹後脳脊髄炎(PIE):発疹出現後、3週くらい。1000人に1人の割合で発症。死亡率15%、後遺症25〜50%

   麻疹封入体脳炎(MIBE):麻疹罹患数ヶ月後に出現。免疫抑制剤投与中の患者。予後極めて不良。

▲亜急性硬化性全脳炎 subacute sclerosing panencephalitis(SSPE)

・遅延性ウイルス感染症(Slow virus infection)

 麻疹回復後、数カ月〜10年以上を経て発症

10万人〜100万人に1人

15歳までに発症(好発年齢7-8歳)

・進行性に大脳機能が侵される→数年以内に死亡

・患者血清、能脊髄液:麻疹ウイルスに対する高い抗体価

・患者脳から麻疹ウイルスが分離される

M蛋白の合成能に欠陥→出芽ができず持続感染(?)

 

・麻疹ウイルスの診断

 ウイルスの分離:ヒト胎児肺、腎細胞

 血中抗体価 NT, CF, HI

・予防

 生後12-24ヶ月に不活化ワクチン

 MMR

 

ニューモウイルス亜科

RSウイルス Respiratory syncytial virus

・赤血球凝集能(−)、ノイラミニダーゼ活性(-)

Hep II細胞で良く増殖し巨大な融合細胞 syncytial cellを形成

・乳幼児の冬かぜの最も重要な病原体

 2歳までにほぼ100%の小児が本ウイルスの感染を受ける

1歳以下の乳児の細気管支炎、肺炎の原因

 飛沫感染→気管支上皮細胞内で増殖→細胞壊死→粘液分泌亢進、リンパ球浸潤→間質性肺炎

 

8.ガウイルス科 Togaviridae、フラビウイルス科 Flaviviridae

1970年以前はアルボウイルスArbovirusの一部に属していた。

 節足動物によって脊椎動物に媒介されるウイルスの総称:

 arbovirus  (arthropod-borne animal viruses)

toga:古代ローマ市民が着用していた上着→エンベロープを強調した

flavi:黄色(L.)

・分類

Togaviridae科

 alphavirus属

 rubivirus属  風疹ウイルス rubella virus

 arterivirus属

Flaviviridae科

 flavivirus属

 pestivirus属   ブタコレラウイルス

 hepatitis Cvirus group

1)性状

・正二十面体

・エンベロープ(+)→エーテル感受性

・スパイク(+):ニワトリ、ガチョウの赤血球を凝集

ssRNA

・細胞質内増殖 :アルファウイルス→細胞質膜を被って出芽、

 フラビウイルス→細胞質空胞内へ出芽

 

2)増殖

・乳のみマウス脳内接種

3)疫学

・脊椎動物→吸血節足動物(病変なし)→脊椎動物

 風疹ウイルスは例外

4)感染病理

・節足動物→網内系細胞(増殖)→ウイルス血症viremia(全身期:発熱、頭痛)→標的臓器で増殖:病変

1]アルファウイルス属

a.東部ウマ脳脊髄炎ウイルス:EEE; eastern equine encephalomyelitis

・東アメリカ、中部アメリカ、東部南アメリカ、フィリッピンに報告されている

・リザーバーreservoir:野鳥→ベクター:ヤブ蚊→最終宿主:ウマ(ヒトにも)

・晩夏に流行、脳炎をおこす

b.西部ウマ脳脊髄炎ウイルス:WEE

・感染経路はEEEと同じ

・症状はEEEより軽いか不顕性

c.チックングニアウイルス

・発熱、関節痛:脳炎をおこさず、予後良好

・アフリカ、インド、東南アジア

・東南アジアでは流行性出血熱

2]フラビウイルス属

a.日本脳炎ウイルス、b.セントルイス脳炎ウイルス、c.黄熱ウイルス、d.デング熱ウイルス、e.ロシア春夏脳炎ウイルス、f.西ナイルウイルス

 

a.日本脳炎ウイルス Japanese encephalitis virus: JEV

 Economo脳炎=冬季脳炎→A型→現在は認めない

 日本脳炎  =夏季脳炎→B型→Japanese B encephalitis→Japanese encephalitis

1)増殖

[動物]

・乳のみマウス脳内接種:感受性高い→ウイルスの分離に使用

・ウサギ、モルモット、トリ:不顕性感染、ウマ:脳炎、ブタ:感受性強い、不顕性感染

[培養細胞]

・ハムスター腎細胞、ブタ腎細胞→CPE(+)

2)感染病理

・発症は0.1%程度、不顕性感染がほとんんど

・発症者:50%治癒、25%後遺症、25%死亡

・症状:発熱、髄膜刺激症状、脳炎症状

・蚊→所属リンパ節:増殖→ウイルス血症→[ここで終われば不顕性]→脳内、病巣:脳皮質、核、脊髄の神経細胞

・[免疫]

 インターフェロン→IgM→IgG、細胞性免疫が治癒に重要

3)疫学

1)流行:7〜10月

  ベクター:コガタアカイエカ

  カ→ブタ→カ→ヒト

 ☆ブタが増幅動物amplifierとして重要;一夜で数百匹の蚊に刺される、不顕性感染 

2)患者

 幼児、高齢者に多い→高齢者に移行

3)地域

 日本、中国、韓国、東南アジア(増加)

4)診断

 ・対血清(ペア血清)にて、HIとCFで検査

 ・ウイルス分離:乳のみマウス脳内接種

5)予防

・蚊の駆除、・増幅動物対策:ブタの予防接種、・感受性者対策:ヒトの予防接種

 

b.セントルイス脳炎ウイルス

・夏〜初秋、アメリカ(St. Louis, Kansas)

・脳炎症状

vector:蚊、reservoir:トリ

 

c.黄熱ウイルス yellow fever virous

1)病原性

・ネッタイシマカ→所属リンパ節で増殖→ウイルス血症→内臓で増殖(潜伏期3〜6日)→症状

・肝炎(黄疸)、腎炎(蛋白尿)、胃腸出血、高熱

2)流行地:中南米、アフリカ

3)感染経路

・都市黄熱:ヒト→カ→ヒト→カ

・ジャングル(森林)黄熱:サル→カ→サル→カ→(ヒト)

4)予防:蚊の駆除、予防接種(弱毒生ワクチン)

 

d.デング熱ウイルス dengue virus

・血清型:1〜4型

(1)症状

・(軽症)二相性発熱、関節痛、筋痛、発疹

・(重症)出血性デング熱:発熱後、急激な血圧低下と出血傾向→ショック症状→意識障害→死亡(致命率5〜10%);東南アジアの3歳以上の女児に多い

 ☆異なる型のウイルスに2度感染すると、最初の感染でできた抗体がウイルスを中和せず、むしろFcレセプターを介してマクロファージへの感染を促進する

2)流行地

・東南アジア、オーストラリア、第二次大戦中長崎で大流行

3)感染経路

・ヒト→カ→ヒト→カ; ネッタイシマカ>ヒトスジシマカ

e.ロシア春夏脳炎ウイルス RSSE

・旧ソ連東部

reservoir:齧歯類、野鳥→vector:ダニ→ヒト

  重症脳炎

d.西ナイルウイルス

・米国東海岸で流行

・カラスなどの鳥で増殖し、蚊を媒介として人間や馬に感染する。

  多くは風邪症状で1週間以内に治癒するが、約150人に一人の頻度で脳炎を発症する。

  脳炎発症者は高齢者に多く、3割の症例で後遺症が残るほか、死亡率も3-15%に達する。

  4類感染症に指定された。

 

 

3]風疹ウイルス rubella virus

・ルビウイルスのうちヒトに病原性を示すものは風疹ウイルスのみ

・節足動物によって媒介されない

・臨床像、疫学的様相は麻疹ウイルスに似る

1)性状

・血清型は種

・エンベロープ(+)、エンベロープには赤血球凝集素(ニワトリ、ガチョウ、ハト、ヒト赤血球)と補体結合抗原が存在する

・プラス鎖ssRNA

2)増殖

・ヒト羊膜細胞、ウサギ・サル腎細胞 CPE(+)

3)病原性

a.風疹(小児)

・上気道感染(飛沫感染)→潜伏期15日→発熱、発疹、リンパ節腫脹→ 発疹は3,4日で消退→終生免疫

・発疹:頭部→全身

b.先天性風疹症候群 congenital rubella syndrome:CRS

・妊娠早期に感染→胎盤→胎児で増殖

・妊娠1ヶ月:58%、2ヶ月:36%、3ヶ月:15%、4ヶ月:7%

3主徴:心奇形、白内障、内耳性難聴

4)診断

・ウイルス分離:培養細胞

・血中抗体価:HI(ガチョウ、ニワトリヒナ)、NT, CF

5)予防

1977年より中学女子(13〜15歳)に弱毒生ワクチン接種→先天性風疹症候群の予防

・妊婦には接種できない、2ヶ月間は避妊する

1989年よりMMR三種混合ワクチン

 

9. アレナウイルス科 Arenaviridae

arenosus=sandy電顕でウイルス粒子内に砂状のもの(宿主細胞由来のリボソームをもつ)が観察される。

・齧歯類に持続感染(自然宿主)しており、まれにヒトに感染する。

1)リンパ性脈絡膜炎ウイルス lymphocytic choriomeningitis (LCM) virus

[ヒト]

・ペットのハムスターから感染することあり

2〜3週間の潜伏期後、発熱、悪寒、筋肉痛などの感冒症状、一部には無菌性髄膜炎をおこす。予後はよい。

[マウス]

・新生時に感染した場合は症状を示さないが、尿中にLCMウイルスを持 続的に排出する

・成熟マウス脳内に接種すると1〜2週後、痙性麻痺で死亡する、キラーT細胞による脈絡髄膜脳炎

2)ラッサウイルス Lassa virus

1969年にナイジェリアのラッサ地方で発生

・死亡率高い(1/3〜2/3)

・症状

 6〜20日の潜伏期→全身倦怠、頭痛、筋肉痛など(インフルエンザ様症状)→発熱、咽頭炎、肺炎、心筋炎→出血傾向、腎不全、心不全→ショック状態

・自然宿主:マストミー(野ネズミ)、一度感染すると生涯ウイルス血症をおこし、尿中にウイルスを排出し続ける

 

10. ピコルナウイルス科 picornaviridae

pico=小、rna=RNA

・正二十面体、プラス鎖ssRNA、エンベロープ(-)、逆転写酵素(-)

1)エンテロウイルス属:酸(pH3)に安定

 2)ライノウイルス属 :酸に不安定

 

1)エンテロウイルス属 enterovirus

 a. ポリオウイルス poliovirus

 b. コクサッキーウイルスA群、B群 coxsackievirus

 c. エコーウイルス  echovirus

 d. エンテロウイルス  enterovirus :1968年以降分離されたエンテロウイルス属は68番以降の血清番号が付けられる。

 

a. ポリオウイルス poliovirus

・急性灰白髄炎(ポリオ)poliomyelitis

・小児の脊髄前角細胞をおかす→弛緩性麻痺

1)性状

・抗原性:1〜2型

2)増殖

・自然宿主:ヒト、実験的:霊長類

・培養細胞:ヒト胎児細胞、サル腎の初代細胞、HeLa細胞、CPE(+)

3)感染病理

・経口感染→咽頭、小腸の粘膜で増殖→リンパ節→血中(ウイルス血症)→局所神経節→中枢神経節   

[症状]

1)不顕性感染:大多数

2)不完全ポリオ:中枢神経症状(-)、感冒様症状

3)非麻痺型ポリオ:無菌性髄膜炎、頭痛、嘔吐

4)麻痺型ポリオ:全体の1%、下肢→上行性弛緩麻痺

4)診断

・ウイルス分離:咽頭ぬぐい液、糞便→サル腎細胞

  髄液からはウイルスを分離できない→コクサッキー、エコーと異なる

・血中抗体:CF, NT

5)疫学

・流行:夏〜秋

・現在年間10人程度の発症

6)予防

・不活化ワクチン(Salkワクチン):ホルマリン処理→抗体は血中ウイルスを中和できるが、腸管ウイルスの増殖を抑えることはできない。ウイルスの血中から神経細胞への移行は阻止する→麻痺を抑える

・生ワクチン(Sabinワクチン):弱毒株→IgA抗体→腸管でのウイルスの増殖も抑える。 逆変異の可能性は残る。

・米国大統領 F.D.ルーズベルトがポリオの研究を援助した

 

b. コクサッキーウイルス Coxsackievirus

・米国ニューヨーク州コクサッキー地区でポリオ様患者より分離された

 

A群:乳のみマウスの骨格筋に広範な変性破壊を起こす

 B群:乳のみマウスの中枢神経、膵臓、脂肪組織に変性を起こす

1)性状

(特異抗原)

A群:23型、A1-22, 24

B群:6型、B1-6

2)増殖

・自然宿主:ヒト、実験的:乳のみマウス、ハムスター

・培養細胞:ヒト、サル腎細胞 CPE(+)

3)病理

・不顕性感染多い、一般に軽症

A群

 手足口病(水疱性発疹症候群):手掌、足蹠、口腔に丘疹および水疱。

  10歳以下の小児、1週間で治癒、A4, 5,10,16,エンテロウイルス71

 ヘルパンギーナ:発熱性咽頭炎、1-4歳児の咽頭発赤と軟口蓋の小水疱

  A2,4,5,6,8,10,22型

 出血性結膜炎:A24, エンテロウイルス70

B群

 流行性筋痛症:突然の胸腹部の筋痛、発熱、咽頭炎

  B1-6型

 心筋炎、心嚢炎:新生児の呼吸困難とチアノーゼ

4)診断

・ウイルス分離:咽頭ぬぐい液、糞便、髄液

・血中抗体価

c. エコーウイルスechovirus

 enteric cytopathogenic human orphan virus

 

1)性状

・特異抗原:32型

・一部の型はヒトO型赤血球を凝集する

2)増殖

・ヒト、サル腎細胞、CPE(+)

3)病理

・不顕性感染多い

・無菌性髄膜炎:4,6,9,11,14,16,18

・小児下痢症:18,20

・上気道炎:11,26,28

・発疹、発熱

4)疫学

・夏に多発する、小児は感受性が強い

 

d. エンテロウイルス

・急性出血性結膜炎:70型、1969年ガーナ、アポロ病

・手足口病:71型、コクッサッキーA型より髄膜炎症状を来す事が多い

・エンテロウイルス72:A型肝炎ウイルス

 

2)ライノウイルス属 Rhinovirus

・感冒common cold、上気道感染症の30%

Rhino→鼻風邪

1)性状

・特異抗原:114種類→何度もかぜをひく

2)増殖

H strain(大部分):ヒト細胞のみで増殖

M strain:ヒト、サル腎細胞で増殖

CPE(+), 33゜Cで増殖

3)病理

・かぜ症候群、発熱は認めない、アデノウイルスやインフルエンザウイルスより軽症

 

11. レオウイルス科 Reoviridae

  respiratory and enteric orphan virus:呼吸器と糞便から分離

・正二十面体、・dsRNA 、10-20個の分節状、・エーテル耐性、

・細胞質で成熟

1)レオウイルス属 Reovirus

2)ロタウイルス属 Rotavirus   (Rota=車輪)

((3)オルビウイルス属 Orbivirus)

 

1)レオウイルス

1)性状

10分節、・NT, HIで3型

2)増殖

・培養細胞:ヒト、サル腎細胞 CPE(+)

・新生仔マウス

3)病理

・疾患との関連が明確でない

・成人の大多数が抗体陽性→不顕性感染

・ウイルスを接種しても疾患を起こさない

 

2)ロタウイルス

1)性状

11個の分節dsRNA、・A〜F群

2)増殖

・サル培養細胞:アカゲザル胎児腎細胞株MA104

3)病理

1)乳幼児下痢症:A 群ロタウイルス、2歳以下の乳幼児にみられる白色下痢、秋から冬に多い

2)成人下痢症:B群ロタウイルスによる

3)急性下痢症:C群ロタウイルスによる

4)疫学

・冬季の乳幼児下痢症の60〜90%を占める

 

12.1 ラブドウイルス科 Rhabdoviridae

ヒト病原体として重要なものは狂犬病ウイルスのみ。

1)性状

rhabdo:棒状、砲弾型の特徴的な形態

・らせん状ヌクレオカプシド

・マイナス鎖ssRNA、ビリオン内にRNA依存性RNAポリメラーゼを保有する。

・細胞質内増殖

2)狂犬病ウイルス rabies virus

・人獣共通感染症、ほとんどの陸生の食肉動物が本来の宿主、ヒトは患獣から感染する終末宿主

reservior:コウモリ(無症候性)

1)病原性

・潜伏期:長い、1週から1年

・咬傷から唾液中のウイルスが侵入→局所の筋肉、結合組織で増殖→アセチルコリン受容体をレセプターとして神経細胞に感染→末梢神経から上行性に中枢神経に達する→広範な脳炎(海馬を中心)

・[症状]筋肉の反射亢進、痙攣→液体の嚥下困難→水を見ると痙攣発作→恐水病 hydrophobia、

 狂躁期→昏睡期→100%死亡(1週間以内に呼吸 中枢が侵される)

2)診断

・咬傷を与えた動物が狂犬病に侵されているかどうかを観察する。

i)患獣の脳からネグリ小体を証明する。

ii)唾液をマウス脳内接種するウイルス分離

3)予防、治療

・動物(イヌ、ネコなど)の予防接種

・潜伏期が長いので咬傷を受けた後でも予防接種が有効

 

12.2フィロウイルス科 Filoviridae

1)性状

・長いひも状ウイルス

・エンベロープ上にスパイクが密に配列

・らせん状ヌクレオカプシド

・マイナス鎖ssRNA

2)病原性

1)マールブルグ病ウイルス Marburg disease virus

1967年ドイツのマールブルグ、ユーゴスラビアのベオグラードで発生

・ウガンダから輸入したアフリカミドリザルの腎臓を初代培養した研究者に発生

・出血熱

2)エボラ出血熱ウイルス Ebora hemorrhagic fever virus

1976年スーダン南部とザイール北東部で出血熱が発生

・エボラ:流行地の川の名

1995年4-5月ザイールのキクイット市で流行

・スーダン、ザイール以外での感染例なし

vector, reservoirは不明

 

両者とも国際伝染病

 

13. レトロウイルス科 Retroviridae

1)性状

reverse transcriptase:retro

1本鎖RNAウイルス

・ビリオン内の逆転写酵素によって、DNAに逆転写され2本鎖DNAとなって宿主細胞DNAに組み込まれて増殖する

 

LTR-gag-pol-env-LTR

  gag: group-specific antigens コアの構造蛋白をコードする

  pol: polymerase 逆転写酵素をコードする

  env: envelope エンベロープをコードする

 その他、v-onc: viral oncogeneを持つ

 

2)分類

1)哺乳類B型オンコウイルス属:マウス乳癌ウイルスなど

2)哺乳類C型オンコウイルス属:マウス白血病ウイルスなど

3)D型レトロウイルス属:スパイク構造が明瞭でない

4)フォーミーウイルス属(スプマウイルス属):病原性不明

5)HTLV-BLV群:HTLV-1, -2, ウシ白血病ウイルス

6)レンチウイルス属:lente=遅い、遅発性ウイルス感染症

  HIV-1, 2, ネコ、サル免疫不全ウイルス

電顕上:A型粒子、未成熟粒子で内部にコア形成がない;B型粒子、コアが遍在;C 型、コアが中心;D型、コアが中心、エンベロープの間に中間膜が存在。

3)病原性

1)発癌

 レンチウイルス属、フォーミーウイルス属以外

発癌の機序

 (A) v-onc transduction model

 (B) insertional mutagenesis model

 (C) trans-acting transcriptional activation model

◇ヒトTリンパ球指向性ウイルス1型 human T lymphotropic virus type 1:

   HTLV-1

・成人T細胞白血病:adult T cell leukemia:ATL、HTLV-1関連脊髄症HTLV-1 associated myelopathy:HAM

tax, rexを持つ

・母乳、輸血、性行為感染(母乳、血液、精液、子宮頚管粘液中の感染リンパ球の移入による)

ATL:感染T細胞の癌化、切れ込みの深い花びら上の核を持つ花細胞  flower cells;白血病細胞の異常増殖、リンパ節腫、肝脾腫、皮膚結節; 白血病細胞osteoclast activating factor高カルシュウム血症

HAM:痙性脊髄麻痺両下肢の麻痺、熱帯性痙性対麻痺 tropical spastic paraparesis:TSP(カリブ海地方)と同一疾患HAM/TSP自己免疫?

HTLV-1関連症候群:関節炎(HAAP)、Sjogren症候群様疾患、間質性肺炎(HAB, HABA)、ブドウ膜炎

・九州(抗体陽性:5-10%)、沖縄(10-30%)に多い、カリブ海沿岸、アフリカ、ニューギニア

ATL発症:1/キャリヤー2000人

・予防:母乳の授乳を禁止する。母乳を凍結する。

・治療:ATLVCPM, 予後不良、HAMステロイド剤

HTLV-II:hairly cell leukemia より分離

2)遅発性ウイルス感染症

・レンチウイルス亜科

◇ヒト免疫不全ウイルス human immunodeficiency virus (HIV)

[性状]

  M-tropic HIV(マクロファージ指向性):エンベロープ上のgp120が細胞のCD4抗原に吸着、更にCCR-5ケモカイン受容体に結合して、宿主細胞に侵入する。

  T^tropic HIV(T細胞指向性):エンベロープ上のgp120がTh細胞のCD4抗原に吸着、更にCXCR4ケモカイン受容体に結合して、宿主細胞に侵入する。

gag, pol, env, tat, rev, nef, vif, vpu, vpr

   tat : transactivator LTRに作用し、ウイルス発現を促進

 rev : regulation of expression of virion protein ウイルス蛋白発現の調節

 vif : virion infecting factor ウイルスの感染性に関与

 nef: negative factor 抑制的調節蛋白

HIV-1, -2:HIV-1はAIDSを発症する、HIV-2はHIV-1と抗原性が異なる、HIV-2は無症候性キャリヤーが多い(1986年西アフリカで分離)

HIVは血液、精液、母乳、性器の分泌液、唾液に含まれ、水平感染および垂直感染する輸血、血液製剤、母児感染、STD (同性、異性)、麻薬常習者

・[症状]感染後1-2週で、かぜ症状又は伝染性単核症様症状2-8週後抗体陽性無症候性キャリヤー(AC: asymptomatic carrier) 4-5年AIDS関連症候群:ARC、持続性全身リンパ節腫脹、発熱、下痢、体重減少、倦 怠感、盗汗などAIDS (CD4陽性細胞が200/ml以下), カリニ肺炎、カ ンジダ症、抗酸菌症(感染症)、カポジ肉腫、非ホジキンリンパ腫(腫 瘍)

・診断:血中抗体 ELISA, PA:particle aggulutination test(スクリーニング)Western blotting(確定診断)

・疫学

・予防:STD, 凝固性剤の加熱、麻薬の注射器

・治療:アジドチミジンAZT, ddI, ddC

 プロテアーゼインヒビター:ウイルスの蛋白分解酵素(pol遺伝子産物 の1つ)を阻害するこの蛋白分解酵素はgagやpol遺伝子産物の前駆体ポリペプチドを切断する。

 

 

14. 肝炎ウイルス

 A, B, C, D, E型肝炎ウイルス

1)A型肝炎ウイルス hepatitis A virus: HAV

[性状]

・エンテロウイルス72型、ヘパトウイルス属

・プラス鎖ssRNA, エンベロープ(-)、不活化:1005分

[病原性]

・経口感染(カキ、ミルク、サラダ、汚染水など)→血流→肝臓

15-50日の潜伏期発熱、食欲不振、全身倦怠感肝腫脹、黄疸終生免疫

・小児では不顕性感染(90%)、成人では黄疸例が多く、1-2ヶ月の長い経過

・予後良好、慢性化はない

[診断]血中抗体、感染初期IgM, 3ヶ月後IgG

[疫学と予防]

・便口伝播→上下水道などの衛生環境が発生に関与する

50歳以上の抗体陽性率:50%以上、20歳以下:数%

・汚染地域への渡航→不活化ワクチン

 

2)B型肝炎ウイルス hepatitis B virus: HBV

・ヘパドナウイルス科

 

[性状]

・正二十面体構造、エンベロープ(+)、2本鎖(部分的に1本鎖)環状DNA

・エンベロープ上にHBs抗原(S遺伝子)、コアにHBc抗原(core遺伝子)とHBe抗原(pre-core/core遺伝子)

polymerase遺伝子:DNA ポリメラーゼ、逆転写酵素、RNase Hその他

X遺伝子:トランスに遺伝子を活性化する

[増殖]特徴的→プリント

・不完全な2本鎖DNA

・ウイルス逆転写DNAポリメラーゼがウイルスmRNAより相補的DNAを逆転写する

・ヒト肝細胞でのみ増殖

HBcAgは核内に、HBsAgは細胞質内に検出

[病原性]

◇非持(一過性)続感染

・不顕性感染多い

・急性B型肝炎:輸血、針刺し事故、STD1-6ヶ月の潜伏期発熱、倦怠感、黄疸など(予後は一般に良い)

・劇症肝炎:感染者の1%、致命率 70-80%

HBVはCPEを示さない、感染細胞のHBc, HBeAgを標的としてTc細胞が攻撃する

◇持続感染、無症候性HBVキャリア

HBeAg陽性の母親から生まれた子供はキャリヤーになる可能性が強い

 (免疫能が低い、免疫不全の成人も)

HBsAgが6ヶ月以上陽性HBVキャリア

5-10%が慢性肝炎に移行肝硬変肝癌

・肝癌:癌細胞のDNA中にHBVのゲノムDNAの組み込みが高率に認められる。X遺伝子のトランス型活性化能がc-onc遺伝子を活性化?

[診断]

・急性B型肝炎

 抗原 潜伏期に血中にHBsAg2-3週で肝炎(HBeAg陽性)、HBcAgはHBsAgで覆われているため血中に検出できない。

 抗体 HBsAgHBc IgMHBc IgG、HBsAg消失HBs抗体:B型肝炎の治癒を意味する

・持続感染

 血中HBsAg, HBeAgは長期に渡り陽性

 HBc抗体は長期間陽性

 慢性肝炎の沈静化:HBeAg消失HBeAb出現(seroconversion)、HBeAbが出現すれば予後良好

[疫学]

・感染率はアフリカ、東南アジアで高い(5-10%)

・日本:2.7%(1970年)0.9%(1991年)

・日本ではほとんどが母児感染→慢性肝炎10%肝硬変20%肝癌

 

[予防と治療]

・中和抗体:抗HBs抗体

・ワクチン:S遺伝子を酵母に導入し、組換えHBsAgをつくらせる組換えワクチン、不活化ワクチン

・抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG):母児感染(キャリア化)の防止

 HBeAg陽性の妊婦生後24時間以内に子供にHBIGを投与2ヶ月からワクチン接種

 医療従事者:針刺し事故などにHBIGを投与

・治療:IFN

[消毒]

・煮沸(15分)、オートクレーブ、次亜塩素酸ソーダ、グルタールアルデヒド、エチレンオキサイドガス

3)C型肝炎ウイルス hepatitis C virus: HCV

・非A非B型肝炎ウイルス

1989年米国Chiron社が感染チンパンジーのRNAよりC型肝炎ウイルスのcDNAをクローニング

[性状]

・フラビウイルス科のRNAウイルス

HCVゲノム:C領域、コア蛋白;E1(envelope1)領域とE2 (またはNS1:nonstructural protein 1)、エンベロープ糖蛋白;NS3領域, プロテアーゼとヘリカーゼ;NS5領域、RNAポリメラーゼ 

[病原性]      HCV screening

・輸血後肝炎(受血者の10%5%に発生)の大部分を占める。

・その他、性行為(STD), 母児間で感染

・約1ヶ月の潜伏期後急性肝炎約半数が治癒、キャリア慢性肝炎へ移行しやすい(約50%)10-30年で約30%が肝硬変肝癌

[診断]血中抗体

ELISA, Western blotting

[疫学]

・日本におけるHCVキャリア:1.2-1.4%(約150万人)

C型肝炎患者:70-90万人、肝硬変(15-18万人)、肝癌(1-2万人)

・昭和63年 肝癌で死亡 23,000人:25%B型肝炎、57%C型肝炎、18%不明

4)D型肝炎ウイルス hepatitis D virus: HDV

1977年イタリアのRizzetto:B型肝炎ウイルス感染者にのみ検出する肝細胞核内抗原d抗原;d因子の中に存在D型肝炎ウイルス

HDV:HBVの共存下でのみ増殖できる不完全ウイルスHBVのエンベロープを持つ;HBVはHDVのヘルパーウイルス

HDVはHBVによるB型肝炎の重症化をもたらす

・欧米、アフリカ、南米、オーストラリアに多い

・日本:1%以下

5)E型肝炎ウイルス hepatitis E virus: HEV

・インド、バングラデシュ、ミャンマーなどの東南アジアおよびエチオ ピア、メキシコなどの熱帯、亜熱帯でみられる流行性肝炎

ssRNA

・糞便に汚染された飲料水を介する経口感染

HAVに感染した抗体陽性者に好発

・潜伏期:約40日

・死亡率:1-2%、A型肝炎の10倍、特に妊婦に高い

・抗体はHAVにもHBVにも反応しない

・症状はA型肝炎に似る、慢性化することもない

 

15.その他のウイルス

1)ブニヤウイルス科 Bunyaviridae

・アフリカ、ウガンダの地名:Bunyamweraに由来する

・エンベロープ(-)、マイナス鎖ssRNA、3分節RNA

・アルボウイルスの一部

1)ブニヤウイルス属

vector:蚊、アフリカなどでみられる熱性疾患

2)フレボウイルス属

vector:スナバエ

・リフトバレー熱:アフリカの熱性疾患

3)ナイロウイルス属

・ナイロビ羊病ウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス

4)ウクウイルス Uuku virus

腎症候性出血熱ウイルス hemorrhagic fever with renal syndrome(HFRS):

ハンタウイルス Hanta virus

・韓国型出血熱

・出血傾向(結膜の充血、皮膚の点状出血)、発熱、蛋白尿、乏尿

reservior:ネズミ、vector:ダニ

1970年以降、実験動物施設にラットの感染があり、発症者が100名を越した。

2)コロナウイルス科 Coronaviridae

・ビリオンが太陽のコロナに似ている

・花びら状突起をもったエンベロープ

・プラス鎖ssRNA

[病原性]

かぜの原因ウイルス:鼻汁、鼻閉、くしゃみ、咽頭痛などの上気道炎症状→病後免疫は弱い→再感染

3)ウイロイド viroid

・低分子のRNAが病原体であるもの

・生活環の中にビリオンを認めない

・植物:potato spindle tuber病、citrus excortis病、chrysanthemun chlorotic mottle病など

 

16.伝播性海綿状脳症 transmissible spongiform encephalopathy

・ヒツジ:スクレイピー scrapie

・ヒト:クールー kuru、クロイツフェルトーヤコブ Creutzfeld-Jakob病, ゲルトマン・ストロイスラー・シャインカー病、致死性家族性不眠症

  ウシ:ウシ海綿状脳症 bovine spongiform encephalopathy(BSE)(1986年より英国)

  その他の動物:ミンク、シカ、ネコ、トラ、ピューマ、チータなどに海綿状脳症が認められている。これらは野生動物ではなく何れも動物園などで飼育されたもので、飼料が感染源として疑われる。

・ウイルスとは異なる濾過性病原体(プリオン蛋白)、感受性のある動物に感染させることができる→脳に海綿状変性

1)クールー

・ニューギニアのフォアFore族にみられた振せんと歩行障害(小脳症状)、痴呆発病1年以内に死亡

・死者の脳を食べる習慣→中止によって発症は無くなった

・中枢神経の灰白質に海綿状空胞形成、クールー斑:PAS陽性アミロイド斑、神経細胞の空胞化変性、脱落

・チンパンジーに感染可能

2)クロイツフェルト・ヤコブ病 Creutzfeld-Jakob  disease (CJD)

・世界中に分布、40〜60歳の約100万人に1人

・痴呆、ミオクローヌス(間代性痙攣)を主徴とする

・発病から2年以内に死亡

・脳の海綿状変性、神経細胞の空胞変性、アミロイド斑、炎症反応(-)

・角膜移植、保存脳硬膜移植、脳深部電極の再使用、下垂体から抽出した成長ホルモン投与による感染例あり(医原性クロイツフェルト・ヤコブ病)

  prion protein: PrP

3)ゲルトマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)、致死性家族性不眠症(FFI):優勢遺伝病、プリオン遺伝子に変異が認められる。

4)新型クロイツフェルト・ヤコブ病:発症年齢がクロイツフェルト・ヤコブ病に比べると極めて若い(平均23歳)。下記のウシ海綿状脳症が食物を介して感染した可能性が大。

3)ウシ海綿状脳症(狂牛病)

1996年英国で大量発生

  スクレイピーを発症したヒツジをウシの飼料(肉骨粉)としたためと考えられる。また、ウシ自身の肉骨粉を牛の飼料としたため。プリオン病では「種の壁」があるため、ヒツジから牛よりウシからウシへの方が感染し易いと考えられる。