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研究

研究テーマ

皮膚科臨床研究の新しい展開
―アレルギーから癌まで―

実験風景
病態解明、新規治療の開発に向けて日夜基礎実験、臨床実験を続けています。

1) 研究対象疾患
図1

 炎症性皮膚疾患、腫瘍性皮膚疾患、遺伝性皮膚疾患を対象とします(図1)。炎症性皮膚疾患としては、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患、乾癬、脱毛症、薬疹、光線過敏症を開学当初から臨床研究の対象としてきました。腫瘍性皮膚疾患としては、皮膚リンフォーマとメラノーマで、とくにリンフォーマは開学以来綿々と研究しています。その他、遺伝性皮膚疾患も最近興味をもって研究している分野です。

2) アトピー性皮膚炎(図2

図2

図3

図4

図5

図6

 皮膚は表皮、真皮、皮下脂肪組織の3層構造です。表皮は角化細胞が90%以上を占め、分化・角化して角層を作ります。角化細胞は角層というバリアを構成するだけでなく、サイトカインやケモカインを産生するなど皮膚の免疫にも関わります。樹状細胞は重要な皮膚における免疫担当細胞です。表皮にはランゲルハンス細胞。真皮には真皮樹状細胞があります(図3)。
 外来抗原に対する皮膚の防御反応には、第1関門と第2関門があります(図4)。第1関門は、角層バリアやタイト・ジャンクション・バリアで外来抗原の侵入を防ぐものです。第2関門は、第1関門を通過してきた外来抗原を炎症を起こしてまでも排除する機構です。これは接触皮膚炎にみられる反応です。第1関門の角層バリアの破壊によって、すぐ外来抗原に対応できるように、皮膚免疫が作動するシステムを研究しています。
 角化に関連する蛋白にフィラグリンがあります。アトピー性皮膚炎(AD)は外因性と内因性に分けることができます(図5)。外因性はIgEが媒介するアレルギー機序によって発症した通常のタイプであり、IgEが高値です。一部の患者ではフィラグリンの遺伝子変異を認めます。一方、内因性ADはIgEが正常域であり、ADの約20%を占め、女性が多いという特徴があります。内因性ADは、皮膚バリア機能が正常でフィラグリン遺伝子変異低頻度です。免疫学的には、IL-4、IL-5、IL-13が外因性ほど高くなく、IFN-γ産生細胞割合が高い特徴があります。一部では金属アレルギーの可能性があります。この内因性アトピー性皮膚炎の原因を、外因性と比較して研究しています(図6)。遺伝子診断及び免疫学的診断に基づいてサブタイプを確立し、それに応じた治療戦略を構築するのが目的です。

3) 乾癬(図7

図7

図8

図9

図10

 近年、乾癬の免疫学的病態はかなりの進歩をみました(図8)。とくにTh17というTリンパ球のサブセットが、IL-17とIL-22を産生し、乾癬の皮疹を形成していることが明らかになりました。このTh17はIL-23によって維持され、IL-23はTIP-DCと呼ばれる樹状細胞によって産生されます。この樹状細胞の維持にはTNF-αが必要となります。末梢血でのTh17細胞の割合は、乾癬患者では正常人の約3倍認められます。実際、乾癬の皮疹が軽快すると、それにつれてTh17細胞の割が減少します(図9)。
 こうした乾癬の病態に関わるサイトカインを生物学的製剤で抑制すると、乾癬は著しく改善します(図10)。現在、3剤が日本での臨床的に使えるようになり、本学でも積極的にこれらの治療法を行っています。その前後でTh17細胞などをモニタリングするシステムを構築しています。

4) 光アレルギー、紫外線免疫抑制(図11

図11

図12

図13

図14

図15

 光アレルギー性疾患の代表は、薬剤性光線過敏症と光接触皮膚炎です。どちらも光感受性物質である薬剤や塗布物質に紫外線、とくにUVAが照射され生じます。歴史的この光感受性物質が完全抗原になるメカニズムには、プロハプテン説と光ハプテン説がありました(図12)。我々はほとんどの物質が光ハプテンであることを突止め、過去の概念を覆しました。
 薬剤性光線過敏症のメカニズムは、薬剤が経口投与され、皮膚に移行し、樹状細胞が光ハプテンである薬剤によって光修飾され、リンパ節でT細胞を感作し、また薬剤が投与され光があたって惹起されたとき皮膚炎が発症します(図13)。
 一方では、紫外線は皮膚免疫を抑制します(図14)。これはマウスの接触皮膚炎モデルによって研究され、我々も光接触過敏症モデルによって検討してきました。最近、この免疫抑制にはIL-10産生性のランゲルハンス細胞が介在していることを明らかにしています(図15)。

5) 薬疹(図16

図16

図17

図18

 薬剤アレルギーは、もとの病気の治療に差し支えがあるだけでなく、その症状が激烈な場合は命を落としたり、後遺症を残したりすることもあります。医学や医療が進んでいる現在においても、病気を治すために用いる薬剤によってなぜある人にアレルギーを生じさせてしまうのか、そのメカニズムは残念ながらよくわかってはいません。私たちは、その難問に取り組んでいます。

 アレルギーがおこるということを理解するためには、免疫のしくみについて少し知識が必要です。薬剤アレルギーは主に白血球の中のリンパ球という細胞、特にその中でもT細胞という細胞が関わっています。この細胞は、病原体に対して防御する時に、非常に大切な役割をもっています(図17)。特に様々な形のT細胞受容体が細胞の表面に出ていることが特徴です。生まれたばかりの赤ちゃんはナイーブT細胞と呼ばれる出来立てのT細胞ばかりが巡っています。さまざまな感染症やワクチンなどで様々な病原体や病原体に似た蛋白質が体内に入ると、それにぴったりと嵌り込むT細胞受容体をもったナイーブT細胞(青色)は、メモリーT細胞(オレンジ)となります。そしてこのメモリーT細胞がもう一度同じ蛋白質に出会うと、強力に活性化して炎症を引き起こし、病原体から身を守ります。人それぞれ経験する病原体やワクチンは違いますから、それぞれ住んでいる環境に応じた免疫が造られるという、巧妙な人体のシステムが垣間みられます。

 では、薬剤アレルギーを起こす人はどのような人でしょうか。おそらくこのような人達は、薬剤を病原体と間違って認識してしまうような免疫システムの欠陥があるのだと考えられます。昔は、体質といって遺伝的に受け継がれたものが薬剤アレルギーの発症に最も重要だと考えられてきました。しかし、最近の分子生物学技術の進歩によって、新しい事実がわかってきています。確かにアレルギーを起こしやすい人は、HLAという遺伝子にある特徴があることが中国や日本人などで判明しました(図18右)。でも、アレルギーのひどさは、少なくとも日本人においてHLAとは関連しないこともわかっています。薬疹をおこすということと、重症の薬疹を起こすということは別問題だったのです。私たちは、薬疹の患者さんの血液や皮膚から、薬剤に反応するT細胞をひとつずつ調べています。重症でひどい後遺症を起こすような火傷に似た薬剤アレルギーの患者さん(図18左上)は、T細胞の中のCD8細胞という細胞が活発に皮膚へ入り込んでいることがわかりました(図18左下)。また、病原体やワクチンの経験によって形付けられるT細胞受容体の方に共通した特徴がある場合が多いこともわかりました(図18右、Hashizume et al, J Immunol 2002, 2008)。したがって、薬剤アレルギーをおこすためには、体質的なものと、その人の様々な経験的な要素とのふたつが混じりあっているのではないかと考えられます。

 薬剤アレルギーは、患者さんにとっても、また薬を処方した医師にとっても、不幸な病気です。これによって、年間100名以上も亡くなっている事実を知ると、この病気の原因を解明し、アレルギーを起こさない薬を開発することは、現代医療にとって重要な課題です。私たちはこれに対して一生懸命取り組んでいます。

6) 脱毛症(図19

図19

図20

図21

 脱毛症の代表的な疾患は円形脱毛症です。マウスの脱毛症モデルを用いて病態のメカニズムと治療法を検討しています(図20)。このモデルマウスはヒトの円形脱毛症に類似した脱毛症状を自然発症します。ヒトの円形脱毛症では毛包周囲に著明な炎症細胞浸潤が観察されます。Th1ケモカインであるIP-10の発現が亢進していることが、この細胞走化性に影響を与えていると考え、研究を行っています(図21)。

7) 皮膚リンフォーマ(図22

図22

図23

図24

図25

図26

 この分野の研究は、初代山田教授、二代瀧川教授、そして三代戸倉まで続いています。戸倉は留学先のYale大、前任地の産業医大でもリンフォーマ研究を行っています(図23)。Yale大ではスーパー抗原による腫瘍T細胞の反応を研究し、産業医大では成人T細胞性白血病 (ATLL) について研究しました。
 リンフォーマ細胞のケモカイン受容体発現、ケモカイン産生、ATLL細胞の制御性T細胞としての性格、PD-1やそのリガンド産生の研究で成果を上げています(図24)。また最近、ATLLの皮疹を6型に分け、それが独立した予後因子であることを見出しました(図25)。またEBウイルス関連リンパ球増殖症の皮膚症状としての蚊アレルギーについても多くの研究を行っています(図26)。

8) メラノーマ(図27

図27

図28

図29

 メラノーマの治療として、経皮ペプチド免疫療法を行っておりました(現在、新規患者さんの受け入れはしておりません)。これは別項に詳述しています。抗原ペプチドを用いた細胞傷害性T細胞 (CTL) 誘導性の治療法の一つです(図28)。
 その他、黒色腫細胞の腫瘍免疫エスケープ現象をPD-1のリガンドであるPD-L1を検討することによって、研究しています(図29)。

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