|
@私は臨床医学として脊椎脊髄外科、そして基礎医学として脊髄損傷後の脊髄再生をテーマとして研究してきました。脊椎脊髄外科の中でも、特に難治性である脊髄髄内腫瘍と後縦靭帯骨化症で麻痺率の高い胸椎後縦靭帯骨化症の治療を中心に行ってきました。どちらの疾患も手術的加療に難渋し、術後神経症状が悪化する可能性が高いため多くの脊椎脊髄外科医も敬遠する疾患です。脊髄髄内腫瘍は一年に20例近く行い、今まで私自身が手がけた髄内腫瘍は149例であります。髄内腫瘍の手術的加療を行う上で、最大限に注意を払わなければならないのは術後の麻痺をできる限り少なく、そして可能な限り全摘出をめざさねばならないことです。この目的を達成するため、手術手技の向上と術中脊髄モニタリングの確立につとめ、その結果として術後麻痺の悪化率は20%へ軽減し、全摘出率は80%を超える成績まで得ることが可能となりました。
脊髄麻痺を回避するのに必要なのは適切な脊髄モニタリングの確立です。我々が開発した術中脊髄モニタリングの特徴は、頭部を電気刺激し、16の筋肉の筋電図を術中にモニターすることで、運動路のモニタリングを行うことにあります。術中にモニターが悪化した場合には、脊髄腫瘍摘出操作を休憩し、モニタリングが改善したところで再度手術操作を開始します。この操作を繰り返すことによって脊髄麻痺を軽減しながら、腫瘍摘出を可能とします。この脊髄モニタリングは髄内腫瘍摘出に応用するだけでなく、全ての脊椎脊髄手術をより安全に行うために有効な手段となりえます。現在は脊椎脊髄外科学会で脊髄モニタリング委員会プロジェクト委員長を拝命し、脊椎脊髄手術をより安全に行うためにこの脊髄モニタリングの知識と技術普及に努めています。
|