総合病院の外来を訪れる患者さんの少なくとも20%が精神科の病気で悩んでいるのをご存知ですか? 精神科の病気は大変多いのですが、実は、その大多数が精神科以外の診療科で治療を受けています。多いのはうつ病、不安障害、身体表現性障害です。その理由は、これらの患者さんは症状として身体症状を持っていて、それが大変苦しく、辛いので、内科などを受診するのです。たとえば、うつ病の場合、患者さんは頭痛、肩こり、めまい、動悸、息苦しさ、腰痛、胃がもたれる感じ、手足のしびれや冷感、目のかすみ、耳鳴りなど、実に多彩な症状を訴えます。この時、同時に存在する抑うつ気分や不安感などをたずねて、うつ病と診断し、抗うつ薬を服用するよう指導しなければ、症状はよくなりません。
その他にも、精神科以外の診療科でよく遭遇する精神科の病気があります。たとえば、痴呆性疾患とせん妄がそうです。痴呆は高齢化社会を迎えてますます増えています。高齢化社会への対応策として介護保険制度ができました。介護保険を運用するには医師の意見書が必要です。その多くは、かかりつけ医によって書かれますが、かかりつけ医が難渋しているのが痴呆に関する記載項目なのです。つまり、痴呆をどのように評価し、どういうタイプの痴呆なのかを鑑別することが、今は、精神科医のみならず、どの診療科の医師にも求められる時代になったのです。せん妄も高齢化社会と関係しています。せん妄は心筋梗塞や劇症肝炎などの重度の身体疾患に伴って出現します。また、外科手術の後にも出現します。高齢者が骨折で手術した後には、せん妄がかなり高率に発生しています。せん妄は高齢者ほど出現しやすいからです。せん妄は老年性痴呆でもよくみられます。せん妄という症状を正しく判断し、正しいくすりを用いれば、せん妄は容易に改善します。しかし、医師がせん妄を精神科の病気、すなわち脳の症状としてとらえることができないと、患者さんのみならず、スタッフにも不要な負担を強いることになります。
最近、爆発的に増えている摂食障害の患者さんも、その多くはかかりつけの先生にまず相談し、次いで精神科に紹介されてきます。先に、総合病院の外来患者さんの約20%が精神科の病気や症状を持っているといいました。しかし、経験的な印象ではもっと多いと思います。開業している先生方のお話から推測すると、40%程にはなると思います。この傾向は親切な医師ほど高いようです。このように、臨床家としての幅を持たせるには精神科の経験は不可欠といってよい時代になったのです。
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