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献腎移植の実際
腎提供を思い立った方へ
〜腎提供の申し出から献腎移植がおこなわれるまで〜

 これは残念なことなのですが、あなたの身のまわりに回復不能な重症の病気の方がいて、どうせ助からないのなら、せめてその腎臓を慢性腎不全で苦しんでいる他のひとのために役立てたいと考えた場合にどうしたらよいか、説明します。

提供の意義
 一般的に血液透析は週に3回行い、1回当たり4時間もかかるうえ、透析では腎機能のすべてを補うことができないので、水分や食事の制限も必要です。腎不全は一生続くので、この状態から逃れたいとみなさんが考えています。静岡県で現在透析を受けている方は約5,000人で、腎移植を希望して登録しているひとが700人弱ですが、これに対して腎の提供数は年に数件です。このためにあきらめて登録していないひとも多く、もし献腎が順調に行われるようになれば、希望するひとは加速度的に増加すると予想されます。ですから、腎を提供される善意はとても貴重なのです。

本人の意思
 献腎が行われるためには、基本的にご本人の意思と家族の同意が必要です。
 先日成立した脳死法案では、脳死での移植を認める代わりに、文書による本人の提供の意志の確認が必要条件になっています。ですから、ふだんから家族でこの問題について話し合って、提供の意志を確認しておくのが望ましいことです。
 腎提供の意志を表示する簡単な方法は、その意志を記載したカードをもっていることです。ご希望の方は(財)静岡県腎臓バンクに連絡ください。
 ここで、いま大きな誤解が生じていますが、心臓死による腎移植はこれまでどおり、ご本人の意識がすでに失われていても、本人の意思が文書で確認できなくともよいので、ご家族の意見がまとまったらご連絡ください。
 つまり、こんどの脳死法案は、心臓死でなくても脳死でも、個人を死亡したと判定し臓器を摘出してもよい条件を述べたものです。いままで許されていた腎移植はいままでどおり許されています。脳死判定もこれまで通り許されており、脳死を判定して生命維持装置をはずすことも許されています。ただし心臓が止まる前に死亡診断書を書いたり臓器を取り出すことは問題があるので、そのときはこんどの脳死法案に従ってくださいということなのです。
 注:今後、脳死法案に一本化するために、現行の「角膜及び腎臓の移植に関する法律」を廃止する可能性もありますが、そのときは上記のことを脳死法案のなかに組み入れるのが厚生省の方針です

提供できない方
 ウイルス性肝炎、結核、梅毒、エイズなど、移植を受けたひとに腎臓といっしょに病原体を持ち込む可能性のある感染症にかかっている方の腎臓は移植できません。癌などの悪性腫瘍細胞のあるひとも、いけないことになっています。
 糖尿病などが原因で、もともと腎機能の悪いひとの腎臓は、移植に適していません。
 年齢については、高齢者では臓器も老化しているために、原則として70歳以下が望ましいとされています。
 ただし現在、献腎の申し出は少ないので、多少条件が悪くとも、貴重な提供のご意志は移植の実現に結びつけたいという傾向がありますので、これらのことで判断のつかないときは、とりあえず提供の意志があるといって、具体的に相談してみてください。

心臓が止まってからではだめです
 現在の心臓死による腎移植では、心臓が止まって死亡が確認されてから腎の摘出を行います。しかし、心臓が止まると一瞬の間に血液が腎の細かい血管にぎっしりとつまってしまって、その腎は使いものにならなくなってしまいます。ですから、私たちは心臓が止まるまでに、すべての準備をととのえて病院で待機していなければなりません。そんなわけですので、心臓が止まって、死の宣告を受けてから、それでは腎を提供しようと考えても、もう遅いのです。

献腎の連絡先
 現在日本では、法律によって(社)日本臓器移植ネットワーク以外のひとは死体の臓器を移植の目的であつかってはいけないことになっています。しかし静岡県には日本臓器移植ネットワークの組織はありませんので、(財)静岡県腎臓バンク(電話:053-435-3175)が、その活動に協力、補完しています。
 献腎の意義を説明し、家族の方と細かく相談し、移植のための準備を進める役割のひとを腎移植コーディネーターといいます。臓器移植ネットワークの名古屋ブロックセンターには専属のコーディネーターがひとりいて、焼津市立病院の透析部の職員が県のコーディネーターとして委嘱を受けています。他に静岡県腎臓バンクが、各病院にボランティアで院内コーディネーター組織をつくろうと現在努力中ですので、現在入院中の病院にも、この院内コーディネーターがいるかも知れません。受持の先生に相談するか、静岡県腎臓バンクないし日本臓器移植ネットワークに連絡ください。

献腎意志表明以後の手順
 連絡がつけば、コーディネーターが病院にお伺いします。主治医の許可をいただいたのち、患者さんの腎臓が移植に適するか否かを腎移植医と連絡をとりながら判断します。そして、ご家族の皆様に腎移植に関わる全ての事柄をわかりやすく説明します。
 これらの説明を受けて、腎臓の提供にご同意いただけたら、改めてご本人またはご家族の同意書をいただきます。そして、組織適合性と感染症の有無を調べさせていただくために、約70mlの採血をします。この血液は、コーディネーターが搬送し、検査センターで検査にとりかかります。これらの検査にほぼ6〜8時 間かかります。
 脳死でなく、心臓死の場合は、実際にお亡くなりになる時刻が近づくと、腎摘出チームが病院にかけつけます。そして主治医と相談しながら、脚の付け根の動脈と静脈に体内潅流のための細い管を留置します。
 主治医により死亡が確認された後、腎の体内潅流が開始され、ご遺体を手術室に運びます。腎の摘出が終了するまでに要する時間は1〜2時間です。
 提供していただいた腎は、献腎移植を希望して臓器移植ネットワークに登録している透析患者さんの中から選択した、組織適合度の最も高いふたりの患者さんにひとつずつ移植されます。この搬送は、コーディネーターが責任をもって行います。
 ご遺体は、腎臓の摘出が終了した後、病室あるいは霊安室にもどってきます。そして主治医、または腎臓の摘出を担当した医師が経過を説明した後、ご自宅にお帰りいただくことになります。
 ご厚意による提供を前提としており、献腎に対する謝礼はいっさいありませんが、後日、静岡県腎臓バンクを通じて、厚生大臣からの感謝状がお手元に届きます。
 以上のことは、静岡県の場合を説明してありますが、他の県でも基本的には同様のはずです。

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