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尿失禁の最新治療
浜松医大助手  影山 慎二 (かげやましんじ)
 (静岡新聞 1997.4.16 医療技術の最先端49 から改変してあります)

 おしっこが漏れる、漏らすということが、問題となってきています。尿が漏れること自体が生命に危険をおよぼすことは、まずないといってよいのですが、そのためにスポーツや旅行などの社会的な活動から遠ざかってしまうことがあり、その治療が重要となってきています。

高齢者の尿失禁
 病院で、尿が漏れることはありませんかと聞かれた高齢者が、「年寄りだから漏れることもありますよ」と恥ずかしそうに答える光景は、いまでも珍しくありません。尿が漏れることは恥ずかしいことで、また、年寄りになれば仕方がないと考える人がいまでも多いのです。
 高齢になれば、男性も女性も脳血管性の神経障害や、トイレに行くまでに時間がかかるために、間に合わず漏らしてしまうための尿失禁も増えてきます。これらを合計すると、最近の全国レベルの調査で、成人女性の尿失禁罹患率は約40%、男性でも約20%です。かなりのひとが、症状の差こそあれ尿失禁を経験しているともいわれています。こうなると誰もが罹る可能性のある病気であるといっても過言ではありません。
 今後、社会の高齢化が進むとともに、尿失禁に対する知識が普及し、病院を尿失禁の悩みで訪れる人は多くなっていくと予想され、それに対して専門の医師・パラメディカルのスタッフも充実してくるでしょう。これらの失禁を診断する検査・機器の改良も目覚ましいものがあります。尿が漏れることで困っていたら、それぞれのひとに適した方法を選ぶことができるので、恥ずかしがらず泌尿器科医を訪れて欲しいと考えています。

女性に多い腹圧性尿失禁
 尿が漏れる状況を尿失禁といいますが、専門的にはいくつかのタイプがあります。最近増加しているのが、咳やくしゃみなどで漏れる腹圧性尿失禁です。特に女性は、骨盤底筋群と呼ばれる、膀胱を下から支える組織が年齢とともに、とくにお産の後に弱くなり、咳などの急激な腹圧の上昇で尿が漏れ易くなるからです。

尿失禁の治療
 腹圧性尿失禁に対しては、骨盤底筋群を強化する運動療法がおこなわれます。簡単にいえば、排尿を我慢する筋肉を鍛えるための運動です。女性の場合は、膣の中に特殊な装具を挿入したり、モニターを使って力を入れるこつを覚える方法があります。これは肥満の減量作戦と似ていて、成功するには本人の努力が必要です。
 弱い筋をサポートする器具も色々開発されてきています。
 薬物療法としては、交感神経の成分であるα受容体を刺激するもの、β受容体を刺激するもの、および副交感神経の成分であるコリン作動性神経を抑制する薬剤などが開発されてきており、それぞれかなりの効果が得られるようになっています。

尿失禁に対する手術
 手術というとお腹を切るものを想像しがちです。従来までは膀胱の前にある恥骨周囲に膀胱を固定する方法がおこなわれていました。しかし近年、色々な方面で、侵襲の小さくてしかも効果の高い治療法が開発改良されてきて、尿失禁の治療でもその進歩は驚くばかりです。膀胱と尿道の接続する部分を、ナイロンの糸などを用いて腹壁からつり上げる手術だとお腹の傷はほんの2-3cm程度です。最近は恥骨にアンカーを埋め込んで、ここから吊り上げる方法が開発されて、非常によい効果を得ていますので、浜松医大で相談してください。
 尿道の周囲にコラーゲンという薬物を注入する方法は、簡単にできて全く傷が残りません。効果が長持ちしないといわれていますが、そのときはまた注入を追加することもできますし、とりあえず治療して効果をみることができます。

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