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腎移植について
浜松医大助手(現焼津市立総合病院医長) 石川 晃 (いしかわあきら)
(静岡新聞 1997.4.9 医療技術の最先端48 から改変してあります)
腎移植とは
慢性腎不全の代表的な治療法に血液透析と腎移植がありますが、血液透析は腎不全そのものを治療する方法ではないので、一生透析を続けなければなりません。それに対して、腎移植は腎臓のはたらきのすべてを復活させることのできる、慢性腎不全に対する唯一の根治的治療法です。
腎不全のために透析に導入される患者さんの数は増え続けています。わが国の透析技術は世界一ですから、患者さんは安心して透析を受けることができますが、1回4〜5時間かかる透析のために週2〜3回、かならず病院に通わなければならないわけですから大変です。しかも透析は、失われた腎臓のはたらきすべてを補ってくれるわけではありませんので、患者さんは食事や水分を制限された上、薬もたくさんのまなければなりません。そして、長い間にはどうしてもいろいろな合併症が起きてきます。現在、患者さんが透析をしなくてもすむようにしてあげられる方法は、腎移植以外にはありません。現在静岡県下では、約5千人が血液透析を受けており、そのうち約600人が腎移植を希望しています。
腎移植には肉親の片一方の腎臓をいただいて移植する「生体腎移植」と、お亡くなりになった方のご厚意で提供された腎臓を移植する「献腎移植」とがあります。献腎移植の場合は、一人の提供者によって二人の透析患者さんが救われます。
腎移植の成績
我々人間には、細菌やウィルスといった「自分ではないもの(非自己といいます)」を厳密に見極めて撃退する能力、すなわち「免疫能」が生まれつき備わっています。同じ人間であっても、自分以外の人間の腎臓は「非自己」ですから、ただ植えただけでは、腎臓を受け取った人の免疫能によって攻撃されてしまいます。だから腎移植後は、腎臓を受け取った人の免疫能を抑える必要があります。幸い現在では幾種類もの優れた免疫抑制剤が開発され、植えた腎臓の生着率(植えた腎臓がしっかりはたらいてくれる割合)はたいへん高くなりました。
当科では、阿曽佳郎初代教授(現・藤枝市立総合病院々長)が1979年11月19日に、県下ではじめて腎移植を行って以来、昨年末までに生体腎115例、献腎95例、あわせて210例の腎移植を行いました。10年ほど前にシクロスポリンという薬が登場して腎移植の成績は飛躍的に向上しました。現在、移植腎の1年生着率(移植した腎臓が1年後にしっかりはたらいている人の割合)は、生体腎で97.3%、献腎で91.4%(いずれも当科のデ−タ)です。先人の努力は実り、今や腎移植は、うまくいって当たり前の時代になったともいえます。
生体腎移植
生体腎移植では腎臓の摘出と移植を同時進行で行います。十分な検査を行って、腎臓を提供する方にも受け取る方にも問題がないことをしっかり確認します。わが国では欧米に比べて生体腎移植の割合が高いが、これは献腎が少ないためでもあります。原則として腎提供者と受腎者は同じ血液型ですが、最近では血液型不適合生体腎移植も可能になりました。
献腎移植
1995年4月に全国規模のネットワークが完成し、静岡県は東海北陸ブロックにはいることになりました。腎臓を提供したいという申し出に対して専門職の移植コ−ディネ−タ−が対応し、十分な説明を行ったうえで、承諾が得られれば、移植を待っている患者さんの中から、同じ血液型で組織適合度が最も高い方が選ばれ、移植手術が行われます。献腎の数は少しずつ増えてはいますが、まだまだ足りず、それをいかに増やすかが、今後の課題です。
血液型不適合生体腎移植
これまで生体腎移植といえば同じ血液型の人同士の間で行われていましたが、医療技術の進歩は、またひとつ人間の免疫能の壁を打ち破りました。血液型不適合移植が可能になったのです。手術に先立ち二重膜濾過血漿交換を数回行って抗赤血球抗体を取り除き、シクロスポリン、アザチオプリン、ステロイドに加え、抗リンパ球抗体と15−デオキシスパガリンを用いることによって、血液型が違う人の腎臓でも生着させられるようになりました。当科でも現在までに3人の方に行い、いずれも成功しました。シクロスポリンよりも強力なタクロリムスという薬も登場し、生着率のさらなる向上が期待できるようになりました。
腹腔鏡補助下腎摘出術
生体腎移植の場合、腎提供者は健康な方である。だから腎臓を摘出する時のキズは小さいにこしたことはありません。従来の方法だと、摘出する側の腰から下腹部にかけて約30cmの皮膚切開を必要としました。当科では、鈴木和雄助教授が中心になって腹腔鏡を応用した手術を行っており、長さ約8cmの皮膚切開で安全かつ確実な腎臓の摘出を行っています。
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