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(中日新聞 1995/6/20)
浜医大 生体腎移植100例目
長泉町の鈴木さん 笑顔で社会復帰
浜松医科大学泌尿器科で、親や兄弟から腎(じん)臓の提供を受けて移植する生体腎移植が百例を数えた。百例目となった患者は十九日、同大で退院後初めての検査を受けたが、経過は良好と聞かされ笑顔の社会復帰となった。一方、死体から腎提供をうけて移植する献腎移植も八十九例と生体腎、献腎を併せた腎移植総数も二百例に迫っており、同大では「今後、献腎移植を積極的に進めたい」という。
百例目となったのは静岡県駿東郡長泉町の会社員、鈴木章浩さん(23)。鈴木さんは昨年一月に慢性腎不全と診断され、人工透析を始めたが、母親のふみ子さん(53)が腎臓の提供を申し出たため、今年六月十四日に同大で移植手術を受け、今月十三日に退院している。
人工透析は週に三回、一回当たり四時間もかかるうえ、水分や食事の制限も受ける生活から解放された鈴木さんは「移植を受けて本当に良かった。提供してくれた母親、手術した先生方には感謝の言葉もありません」。
同大での生体腎移植は昭和五十四年から始まり、これまでの百例で、移植した腎臓がうまく機能しているのかどうかを示す生着率は一年生着率で九十%、三年で七十二%と高率、この五年間の移植に限れば一年で九十六%、三年八十%とさらに高くなる。五十七年から始まった献腎八十九例もこの五年間の生着率は一年で八十七%、三年七十五%と高率。
同大では最長十三年の生着を記録中の患者もいるほか、移植後出産した患者も八例あり、ほぼ完全な社会復帰が可能になったという。石川晃同大助手は「腎移植は腎不全の根治治療として広く普及しつつある。ただ移植を待つ患者はまだまだ多く、今後は社会的合意を得て献腎移植がさらに進むよう働きかけていきたい」と話している。
腎移植 県内では現在、十四の医療機関で実施されており、移植例は生体腎、献腎併せて二百五十例。県腎バンクの腎提供者登録数は二万八千九百二十五人と全国で三番目の登録者数を数え、献腎移植を進める移植システムも整備されているが、移植を待つ患者は五百二十人と多く、献腎移植の増大が望まれている。
注:その後システムが変わり、献腎を受けるためには日本腎臓移植ネットワークに会費を払って登録しなければならなくなったので、静岡県で現在ネットワークに腎移植施設として登録しているのは浜松医大付属病院など9施設です。
(静岡新聞 1995/12/16)
血液型異なる弟の腎移植
浜松医大で成功 県内初 強い拒絶乗り切る
浜松の主婦高橋さん 笑顔浮かべ退院
血液型が違う人の腎(じん)臓を移植する生体腎臓移植が浜松医大泌尿器科(藤田公生教授)で成功し、移植により腎臓がよみがえった主婦は十五日、元気に退院した。血液型不適合による生体腎移植は県内では初めてのケースで、同医大での腎臓移植はこれで二百例目。執刀した鈴木和雄助教授は「血液型不適合のため、通常の移植に比べて拒絶反応が強かったが、危機を乗り切りその後の経過も順調」と太鼓判を押す。また、移植を希望する患者が多いのに対して提供者が少ない現状について「一人でも多くの患者を救うためには腎臓移植に対する市民の理解が不可欠」と啓蒙活動の推進を訴えている。
患者は浜松市幸町四丁目の高橋美智子さん(四〇)。高橋さんは慢性腎不全と診断され、平成二年三月から人工透析を続けてきた。しかし、週三回の人工透析に加え、厳しい食事制限といった状況から解放されたいとして、弟(三七)から腎臓をもらって移植することを決意し、九月中旬に同医大付属病院に入院した。
だが問題は血液型、高橋さんがA型であるのに対し弟はB型。移植は十月二日に行われたが、B型の血液を固めてしまう抗赤血球抗体を取り除くため、移植に先立って血しょう交換が行われた。この後、弟から摘出された腎臓が高橋さんに移植された。
移植そのものは順調に行われたものの、術後九日目から強い拒絶反応が見られ、腎臓機能が低下したため、急きょ人工透析を再開。合併症の発症に細心の注意を払いながら、免疫抑制剤を投与した結果、腎臓機能は次第に回復し、移植から二十六日目で人工透析を中止した。
「治療効果の高い免疫抑制剤が開発されたことと、移植した腎臓に血流が保たれていた」(石川助手)ことが血液型不適合による重度の拒絶反応を乗り切った要因という。高橋さんは顔色も良く、元気な足取り。「何でもおいしく食べられるし、旅行もしたい。人工透析をしていた当時がうそのよう」と喜びを隠し切れない様子だった。
一方、今回の移植でもう一つ注目されるのは鈴木助教授が開発した腎臓摘出法で、副腎腫瘍(しゅよう)に対する腹腔鏡下手術を応用した。腹部を約十センチ切開しただけで、内視鏡を使って提供者から腎臓を摘出した。このため、患者への負担が軽く、入院期間もこれまでの半分に短縮された。
(中日新聞 1996/12/31)
生体間腎移植
提供者負担を大幅軽減
浜松医大のグループ 腹部切開で新手術法
親子間などで行われる生体間腎(じん)臓移植で、提供者から腎臓を取り出す際、手術による提供者の負担を大幅に減らす新しい手術法が、浜松市国立浜松医科大学泌尿器科の鈴木和雄助教授らのグループによって開発された。腹腔(ふくくう)内部をビデオなどで観察できる腹腔鏡を補助的に使い、腹部切開を従来の約四分の一に減らした。こうした手術法の開発、導入は世界で初めて。腎臓提供者の入院期間が短くなる上、大きな手術跡を残すこともなく、術後の痛みも軽減されるという。
移植手術では臓器をできるだけ良い状態で取り出すことが、成功への重要なかぎとなる。このため従来の腎移植の摘出手術では、確実性を重視して提供者のわき腹を斜めに約三十センチも切り開き、腎臓を取り出していた。しかしこの方法だと、手術による提供者の負担も大きく、社会復帰にも時間がかかった。
鈴木助教授らは安全・確実性を確保しながら提供者の負担を減らすため、腎がんなどの摘出に使われ始めた腹腔鏡下手術に注目。移植手術にも補助的に使う手術法を開発した。
この手術法は腹部正面を約八センチ切開し、わき腹に腹腔鏡下手術を入れるための穴(直径一センチ)を二、三カ所開ける。腹腔鏡で内部をモニターで観察したり、手術の補助をしながら、切開した腹部正面から医師が直接、腎臓を見ながら摘出する。
この手術だと従来の方法より、手術時間はやや長くなるが、提供者の負担は大幅に軽減。従来は術後平均十二日の入院が必要だったのが、六・五日に短縮され、手術跡の痛みも軽くなる。鈴木助教授らはこの手術を一九九五年三月から、これまで八例行ったが、全例とも移植した腎臓はうまく機能し、従来の手術との差はなかった。
鈴木助教授は「生体腎移植は健康な提供者にメスを入れるため安全性・確実性が何よりも重要だが、提供者にかかる負担も無視できない。新しい手術により安全・確実を確保しながら、提供者への負担も減らすことができた」と説明、最近はさらに腹膜を切開しない手術も組み合せ、より負担の少ない手術も進めており「腎移植に役立てていきたい」と話している。
注:この新しい手術法については朝日新聞科学欄(全国版)でも紹介されました。移植した腎臓がよく働くためには腎臓を痛めず、安全に取り出す必要があります。この条件を満たしたうえで、しかも腎提供者の術後の傷の痛みが軽く、早い時期に社会復帰してもらうために、私たちは1995年3月から本術式を開始しました.1997年4月までに8人の生体腎移植ドナーにこの手術を行い、全例良好な結果を得ています.従来の開放手術に比べて手術から退院までの日数は約半分に短縮されました.腎不全に悩む人たちの唯一の根治的治療は腎臓移植です.アメリカでも、このような腹腔鏡を利用した手術が普及すれば、これまで術後の傷の痛みをこわがって勇気を出せなかったひとが家族に腎を提供するようになるのではないかと期待されています。今後、痛みの少ない腹腔鏡補助ドナー腎摘除術が普及することによって、更に多くの人が腎移植を受けられるようになることを願っています。
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