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キラキラとした性的なシグナル
―アオハダトンボの翅の構造色−


 自然界には驚くほど美しく輝く色を見つけることができます。右の写真にお見せしたアオハダトンボの翅もその1つです。この美しい色の秘密について私たちは研究をしています。

 不思議なことに青色に金属光沢を放つ翅は雄にしか見られません。雄の翅を詳しく観察してみると、同じ雄でも、性的に未成熟なまだ繁殖のできない雄には金属光沢は観察されません。成熟した雄の個体にのみ見られるのです。翅の反射スペクトルを測定した結果、やはりヒトの眼で観察したのと同じように成熟した雄にのみ480nmほどの波長に極大をもつスペクトルが検出されます。

 成熟した雄の翅を顕微鏡で観察すると、光っている部分は翅の支柱ともいえる翅脈の部分であることがわかります。翅脈の断面の微細構造を透過型電子顕微鏡で観察すると、その表層には雄にのみ、電子密度の高い層と低い層の2つの層の繰り返し構造が観察されました。また未成熟の雄の層状構造は不完全であることがわかりました。これらの結果は、翅脈の青い構造色が多層膜干渉による構造色であると考えています。

 ではその構造色はなぜ雄にのみ見られるのでしょうか?縄張りを張っている成熟した雄に標本のモデルを提示したところ、構造色を持つモデルには攻撃を、持たないモデルには求愛を示したのです。アオハダトンボの翅の構造色は齢の発達とともに出現します。その結果、雄が雌雄や雄の成熟度合いを見分けるシグナルとなっているのです。

 美しく輝く構造色により雄と雌が明確に区別できる動物はクジャクなどを代表に数多く知られます。性的なシグナルに構造色が利用されることに生物学上の特別な理由があるのでしょうか?私たちは動物の視覚情報処理システムが構造色をどのように捉えるかを考えながら、この問題に取り組んでいます。

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