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昼と夜で変化するフナムシの眼
―24時間、モノを見るための工夫−
海辺で出会うフナムシは、視覚を発達させた生き物です。大きな眼で外敵を発見し、石の隙間に逃げ込みます。このフナムシ、じつは夜も活動しているのですが、夜の闇の中でも眼は見えるのでしょうか?
フナムシの眼は、個眼と呼ばれる小さな眼が約1000個集まってできた複眼です。個眼を縦や横に切って観察すると、レンズの役割を果たす角膜レンズと円錐晶体が外側に存在し、それに続いて光を受けとる細胞である視細胞を7つみつけることができます。それぞれの視細胞は光受容物質であるロドプシンを含んだ細い管のようなマイクロビライを光入射軸に対して伸ばしています。マイクロビライは集合して棒状のラブドームを形成するのです。光は角膜レンズと円錐晶体によってラブドームに集光され、光受容物質に光が当たり、その光異性化を促すという過程を経て光受容を開始します。このような個眼の構造は、昆虫や甲殻類などの節足動物の複眼では非常に一般的なものです。
昼と夜とでフナムシの眼を比較すると、その形態は大きく変化していました。ラブドームの体積は夜間、日中の3倍にも増加しています。それにあわせるように光受容物質も3倍に増加していました。また、夜間にはラブドームの先端は円錐晶体側に陥入し、視細胞の中の色素顆粒は細胞質に分散しています。このように夜のわずかな光を効率良く受けとれるように、フナムシはその眼を大きく変化させていたのです。
では、本当に夜のフナムシの眼は、夜に適した感度の高い眼になっているのでしょうか?電気生理学的な方法でこのことを確かめてみました。ある強さの光を様々な方向から視細胞に当て、視細胞の興奮を微小電極法★にて二次元の角感度曲線★を測定しました。その曲線は山型になり、視細胞はまっすぐに入射する光に特に強い反応を示します。昼夜で比べると、夜間には反応の山のすそ野の部分で応答が強く観察されることがわかります。このような結果は、フナムシが夜に感度の良い眼でくっきりと海辺の様子を見ていることを意味しています。
足元を走り回るフナムシは、眼を昼夜で作り変えるという能力を持っているのです。フナムシの眼には夜の浜辺はどのように映っているのでしょうか。私たちはこの小さな生き物の視覚世界をさらに理解したいと考えています。
(用語説明)
微小電極法:細胞に細い電極を刺し、その細胞に刺激を与えた場合、どのような電気的な応答が見られるかを測定する方法
角感度曲線:1つの感覚細胞の受容できる空間的角度(受容域)をその反応の強さ(感度)で示したもの
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