免疫染色プロトコール 

                              2001年06月現在

その1: 脱パラフィン 

  パラフィンを溶かし、組織を露出させる。

 

(1)57℃の保温器に入っている免疫染色用スライドを取り出す。

(2)スライドをカゴに移し、(3)以下の手順で脱パラフィンを行う。

  *スライドはカゴに入れてくれてあることが多い。

  *カゴにはスライドが20枚まで入る。

  *各槽に入れたら、最初カゴを上下に振り、スライドを液に馴染ませる。

(3)キシレン 1槽→ 2 槽→ 3槽( 各3分おく )

  *冬の寒い時はキシレンが溶けにくいので、キシレン1槽に5分おく。

(4)無水アルコール 1槽→ 2槽( 各1分おく)

(5)95%アルコール1槽→ 2槽→ 70%アルコール槽→ 50%アルコール槽

    ( ひたす程度 )

(6)水道水で洗浄( アルコール成分を取り除くため )

(7)カゴをイオン交換水に入れる

  *ここで中断可能:蒸留水に入れて冷蔵庫で保存。

 

その2: 必要に応じて抗原性を回復させるための前処理を行う。

                    必要ない場合はその3へ進む。

方法1:クエン酸緩衝液(pH6.0)によるM..処理 (通常の加熱処理) 

(1)クエン酸緩衝液の20倍濃縮液 25㎖ と 蒸留水 475㎖ を圧力釜に入れる。

(2)カゴに入れたスライドを圧力釜に浸す。

  *カゴは2つまで圧力釜に入る。ただし、完全にカゴを浸すこと。

(3)圧力釜のふたを閉め、電子レンジで 500W×15分、加熱沸騰させる。

  *ここで中断可能:電子レンジにかけた後、そのまま一晩放置。

(4)圧力釜が冷えたら、ふたを開け、カゴを取り出し、PBS溶液(リン酸緩衝液)で

   3分×3回 洗浄する。

  *クエン酸緩衝液は繰り返し利用可能なので、500㎖の三角フラスコに入れて

   冷蔵庫で保存する。

 

方法2:1 mM EDTA緩衝液(pH8.0)による M..処理 (めったにやらない)

(1)0.5Mの EDTA 1㎖ と 蒸留水499㎖ を圧力釜に入れる。

  *後は方法1(2)以下と同じ。ただしEDTA溶液は一度使用したら捨てる。

 

  *方法1と2は、電子レンジでマイクロ波を照射し、加熱処理をする方法。

   別の方法として、オートクレーブによる加熱処理もある。

方法3:ペプシン処理 (酵素によるタンパク消化)

(1)ペプシンを冷蔵庫から取り出し、室温に戻す。(吸湿を防ぐため)

(2)ドーゼを57℃の保温器に入れて温めておく。

(3)ペプシンを溶かす蒸留水を三角フラスコに入れ、パラフィルムでふたをする。

   バケツに水道のお湯を張り、そこに三角フラスコを入れて温めておく。

  *上記の(2)と(3)は、酵素反応を効率良く進めるために行う。

 

(4)0.4%ペプシン溶液の調製法

     スライドの数    7枚以下     8枚以上

     使用するド−ゼ    丸        四角

     ペプシンの量    0.2g      0.6g

     蒸 留 水    49.95㎖   149.85㎖

     0.N HCl   0.05㎖     0.15㎖

 

(5)ペプシンを三角フラスコ中の温めた蒸留水に入れて溶かし、0.1NのHClを

   加えて軽く振り混ぜる。

(6)調製したペプシン溶液を、温めておいたドーゼに移し、スライドをひたす。

(7)37℃のふ卵器の中で20分間、反応させる。

(8)PBS溶液で 3分×3回 洗う。

  *ここで中断可能:洗浄後、PBS溶液に入れて冷蔵庫で保存。

 

その3:内因性ペルオキシダーゼ除去

  ヒトの体の中にある(内因性)ペルオキシダーゼ活性は、抗原抗体反応を検出する

  酵素、ペルオキシダーゼと反応して抗原の同定を阻害する。そのため、一次抗体を

  かける前に、内因性のペルオキシダーゼ活性を取り除いておく。

 

(1)メタノールに過酸化水素水を加えて、反応液を作る。

  *過酸化水素水が皮膚に触れると白く変色し痛くなるので、必ずゴム手袋を着用する。

 

(2)3%過酸化水素水/メタノール 混合溶液の調製法

        スライドの数    7枚以下     8枚以上

        使用するド−ゼ     丸       四角

        メタノール     45㎖     135㎖

       30%過酸化水素水   5㎖      15㎖

 

(3)混合溶液にスライドをひたし、室温で10分(M..処理をしたスライドは15分)

   反応させる。切片の表面から泡が出てくるのが、反応の進んでいる証拠。

 

(4)PBS溶液で 3分×3回 洗う。

  *ここで中断可能:洗浄後、PBS溶液に入れて冷蔵庫で保存。

 

その4: 一次抗体反応

(1)PBS溶液に入っているスライドをイオン交換水に移す。

(2)切片の周囲の水をよく拭き取ったあと、ダコペンで切片の周りを囲む。

  *滴下した抗体が周りに拡散しないように、枠を作る。

  *水分が残っていると、ダコペンの液が切片に染み込むので注意する。

(3)希釈が必要な濃縮抗体を、至適倍率まで薄める。

  *1.5㎖ のサンプルチューブの中で希釈する。

  * BSA ( bovine serum albumin ) を加えたPBSで抗体を薄める。

  *抗体を冷蔵庫から出したら、保冷剤を入れた発砲スチロール箱に移す。

  *希釈倍率に幅がある場合、特に指示がなければ、高い方の倍率を使う。

  *必要な抗体の量はスライド1枚あたり200μl前後。

            (この量は切片の大きさを見て決める)

(4)スライド上の余分な水分を拭き取り、準備した一次抗体を順次滴下する。

  *(3)で希釈した抗体は、ピペットを使って滴下する。この時、チップの先で

   切片を傷付けないように注意すること。

  *希釈の必要がない抗体は、1枚のスライドに3滴ぐらい落とす。

(5)室温で30分(M..処理をしたスライドは60分)反応させる。

  *冷蔵庫に入れて一晩反応(Over Night)させる抗体もある。

(6)噴水びんに入れたPBS溶液で、スライド上の抗体を丁寧に洗い流す。

  *切片に直接噴射すると傷が付くかもしれないので注意して洗う。

(7)洗い流した順にド−ゼに戻し、さらにPBS溶液で 3分×3回 洗う。

  *ここで中断可能:洗浄後、PBS溶液に入れて冷蔵庫で保存。

 

その5: シンプルステイン( MULTI )反応

  アミノ酸ポリマーに、一次抗体を認識する部位と酵素(ペルオキシダーゼ)を結合

  させた標識ポリマー。これを一次抗体と反応させると、抗原=抗体=ポリマー=酵素

  の複合体が形成される。この複合体の酵素活性を利用して、抗原を染色する。

 

(1)スライド上の余分な水分を拭き取り、シンプルステインを順次滴下する。

  *1枚のスライドに2〜3滴。

(2)室温で30分反応させる。

(3)噴水びんに入れたPBS溶液で、スライド上の試薬を丁寧に洗い流す。

  *切片に直接噴射すると傷が付くかもしれないので注意して洗う。

(4)洗い流した順にド−ゼに戻し、さらにPBS溶液で 3分×3回 洗う。

(5)蒸留水で3回すすいだ後、冷蔵庫に入れて保存する。

免疫染色の仕事はここまで。発色は川端さんが見るので試薬の準備だけする。

 

その6:発色の準備

(1)準備する試薬 (手の空いた時にやっておく)

     スライドの数    14枚以下   15枚以上

     トリス緩衝液     50㎖    150㎖

      D A B          10mg     30mg

 

(2)トリス緩衝液は、冷蔵庫の中の大きなタンクに保存してある。タンクから必要量を

   三角フラスコに移してパラフィルムでふたをし、また冷蔵庫に入れておく。

(3)DAB(遮光)も冷蔵庫内にあるので、室温に戻してから秤で計量する。

   薬包紙で包んだあと、薬包紙の表面に粉末の量を記入し、冷蔵庫に入れておく。

    トリス緩衝液を入れた三角フラスコの隣に置いておく。

  *DABは発ガン性があるので、必ずゴム手袋を着用して取り扱う。

 

参考:発色の方法

(1)トリス緩衝液を室温に戻してから、DABを加えて完全に溶かす。

(2)トリス緩衝液50㎖に対して、30%過酸化水素水 5μlを加え、これをドーゼに

   移し、スライドを入れて発色させる。      

(3)光学顕微鏡で発色の程度を観察しながら反応させる。

   約3分〜5分で切片が茶褐色に染まってくる。

(4)発色が終わったら、スライドを蒸留水に入れて反応を止める。

 

 

免疫染色を行う上での注意事項

(1)切片を乾燥させない。乾燥は染色ムラの原因になる。

(2)切片には傷が付きやすいので、丁寧に扱う。

(3)PBSでの洗浄は確実に行う。(特に一次抗体のあと)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                免疫染色手順

1、脱パラフィン

2、前処理

 前処理なし

      ペプシン処理

   M.W.処理

 

・ペプシンを室温に戻す

・ドーゼを55℃の保温器で温める

D.W.を三角フラスコに入れて湯せんする

        ↓

   0.4% ペプシン溶液の調製

 

丸ドーゼ

四角ドーゼ

ペプシン

  0.2 g

  0.6

0.1N HCl

  0.05

   0.15

蒸留水

 49.95

 149.85

        ↓

      37℃で20

        ↓

   PBS溶液で洗浄(3分3回)

クエン酸緩衝液の調製

 20倍濃縮液 25

 + 蒸留水 475

    ↓

電子レンジで加熱処理

  500W15

    

    冷ます

       

   PBS3分3回)

3、内因性ペルオキシダーゼ除去

  反応液の調製 :メタノール135㎖(45㎖)+ 30%過酸化水素水15㎖(5㎖)

 10

 ↓

 PBS(3分3回) 

 10

 

 PBS溶液で洗浄(33回)

 15

 

 PBS33回)

4、イオン交換水に戻し、切片の周りをDAKOペンでマークして、一次抗体をのせる

 30

 ↓

 PBS33回)

 30

 

 PBS溶液で洗浄(3分3回)

 60

 

 PBS3分3回)

5、ヒストファイン  シンプルステインPOMULTI)をのせる

 30

 ↓

 PBS溶液で洗浄(3分3回)

 ↓

 蒸留水で3回洗浄したあと、冷蔵庫に保管

6、発 色  *準備だけしておく

 準 備: DAB 30r (10r)、トリス緩衝液 150㎖ (50㎖)を、各々量り取り、

      別々に冷蔵庫に保管しておく。

 発 色:トリス緩衝液を室温に戻してから、DABを加え完全に溶かす。

     30%過酸化水素水をトリス50㎖に対し5μl加え、発色の具合を見ながら

     反応させる。  発色後、蒸留水で洗う。